ここでは、「長期エネルギー需給見通し」をもとに、(1)その概要、
フランスの国防安全保障事務局（SGDSN）は「重大な原子力または放射線事故に係る国家対応計画」を発表した（2014年2月3日付）。フランスは国家対応計画をそれまで策定せず、地方レベルの対応にとどまっていた。しかし、日本の3・11福島第一原子力発電所事故を受け、原子力災害に対する国レベルの対応計画(ORSEC 計画)を初めて策定した。
それに呼応する形で、フランスの国有電力会社EDFは、福島の事故を教訓にして原子力事故即応部隊（FARN）を設立した。日本政府もこのような機関を創設することを検討したそうだが、地方自治体の権限との関係で断念したといわれている。むしろ電力事業者がまとまって東西2箇所でFARNのような緊急時対応の組織を作ることを検討したらよいのではないかと考える。
112号 コラム 黙ってはいられない；ふざけた判決、これでは法治国家の体をなしていない ―高浜原発３、４号運転差止仮処分命令申し立ての判決―
- カテゴリ: 原子力安全 2015-6-2 5:50 閲覧 (2339)
2015年4月14日に下された高浜原発3，4号運転差止仮処分申し立ての判決文を読んで、一般の人々はどんな印象を持っただろうか。読売新聞では”規制基準否定した不合理判断“(4月15日付)と評した。産経記者は”「個性」の強すぎる判決“裁判官の強いメッセージを感じた、と述べています。(5月27日付)
ＩＯＪでは、この問題をコラム“黙ってはいられない”で取り上げました。特に論拠として「異常その三」で、平成4年10月29日に最高裁で出された伊方発電所の設置許可に関わる判決文を一部引用しました。ぜひ皆さんも一緒に考えてみてください。
誤解を科学すると題して、人間の知の出発点である「創造の基本形式」という視点から捉えてみました。すると”誤解”は究極のイデアに到達するまでの出発点だと捉えることができます。その過程を”登山電車“にたとえてみると、途中駅で「サワヤカ感」や「ナルホド感」が感じられるかどうかで、イデアへの到達度が判定されることになります。”登山電車”をイメージしながら、これまでとは違った論理の展開をお楽しみください。
丸川環境相の問題指摘で議論が再燃した、1ミリシーベルト問題は丸川環境相の完全敗北で決着したが、除染の長期目標1ミリシーベルトは2011年10月の細野環境相（当時）と佐藤福島県知事（当時）会談が行われる以前から決定していたものであった。
会談で決まったのは５ミリシーベルト以下の除染費用をそれまで自治体負担としていたのを国の負担に変更しただけのことである。
2016年の衆議院予算委員会で細野氏はまるで、その会談で除染の長期目標を５ミリシーベルトから１ミリシーベルトに変更したかの如く説明し、巧妙に美談化したのである。実際に行われたことは、5ミリシーベルト以下の除染費用を国で負担すると言う、単なる財政負担問題だったのである。
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誤解はどうし て生じるか原子力には感情的なアンカーが存在するから、ひとは原子力報道を誤解しがちとなる。みんなと一緒に 風評被害にはまると、ある種の連帯感が生じ、風評被害を通じて共同体の一員であることを確認しあう状況に陥る。このような誤解 の特徴を制御するにはどうしたらよいか、誤解の研究のテーマとして取り上げました。
NPO「日本の将来を考える会」（以下「IOJ」という）は原子力がこの国に定着することを熱望しながら11年間に亘ってエネルギー・国際・教育にかかわる問題の解決に貢献するための提言活動等を展開してきた。
その一環として、原子力国民会議が原子力規制委員会設置法の附則抄第五条に基づいて原子力規制委員会設置法を見直し提言書をまとめ関係各筋に説明する活動を側面から支援した。その中で痛感させられたことは、規制側にも事業者側にも見られた実力不足と見識不足である。
それらの問題は、“原子力人材不足と国家的観点からの人材活用方策の欠如”に起因する。その解の一つとして、防衛大学校や仏のエコール・ポリテクニク等の例に倣った“原子力大学校”の設立が構想された。
IOJ ではそのあり方について検討し“提言書”をまとめ、政府に提示した。以下にその概要を記す
1. 基本理念
我が国のエネルギー戦略において、エネルギー安全保障の確立、地球環境・異常気象の問題解決、世界の人々を豊かにするという国際的課題への貢献の立場から、原子力が必須であることは明らかである。
�仝胸厠呂覆�してこの国は成り立たない。
��原子力を国民の手に取り戻す。
２．人災から学ぶ教訓
福島第一原子力発電所事故は、貞観津波規模の津波の再来が予測されていたにもかかわらず、真摯に対策を施す先見性に欠けていたために、自然災害後に人災（人為的災害）とも呼ぶべき重大な原子力事故へと事態を悪化させてしまった。
原子力規制側・事業者側双方に原子力にかかわる知見、経験が大幅に不足していたことに加えて相互の意見交換が十分に行われず、既知の危険に対する安全対策を直ちに施すという姿勢が劣化していたことによると考えられよう。民間側は電力事業者を頂点とする階層構造を作り上げていたが、事業者側に技術的知見が十分に蓄積されておらず、重要な技術的問題は原子炉メーカーに依存していた。一方、メーカー側にも原子力発電システムを総合的に見ることのできる人材は育っていなかった。
これらの我が国固有の構造が人災の根本要因であり、この課題を解決するためには、産官学の壁を超えた新たな組織横断的な人事交流を断行し、優秀な人材を育て、産官諸分野において流動的な人材活用を図る必要がある。
３．原子力教育の充実
我が国の大学の学部では知識を重視し、現象の本質を自ら考えさせる“問題解決型”の教育が十分ではなく、大学院でも論文のための研究に没頭して他分野への関心は薄かった。
また、原子力発電所の現場では機器・システムの異常に気づかせ解決させるという現場に役立つ工学を軽視する風潮があった。原子力基本工学のような学術的な知見だけを有する人材を育てる教育制度に欠けているものを加え、安全文化の確立に寄与できるようにするためには、自然科学に偏っていた教育を社会科学にまで広げるとともに、実践的な工学あるいは原子力発電の現場における実習活動等のあらゆる側面を取り込んだ原子力実践工学の定着を目指す総合的な教育機関が必要であることが指摘できよう。
４．パラダイム変換＝新理念への挑戦
我が国における原子力の有効利用を継続して推進するために、原子力発電によって発生する問題を俯瞰的に把握し、その問題解決に指導的役割を果たせる一流の人材を若手の中から選抜し育成する。
この教育を受けた優秀な人材を原子力発電関係の産官諸分野に広く配置することにより、各分野の担当者が相互信頼を持ちながら創造的な議論を重ねることができる環境を作り出すという“パラダイム変換”に挑戦し、革新的な手法を提案して解決を図る。その新しい経営理念は次のとおりである。
�〜反ゲＣ播�・流動的人材活用：我が国における社会の閉塞性を打破し、人材の流動性を確保するために組織横断的な人事交流と流動的な人材活用を可能とする。
��国際的人材育成と原子力事業の海外展開：学生の海外派遣研修や海外の原子力関連機関の専門家との人事交流を積極的に進め、国際的に活躍できる人材を増やす。
�８胸厠麓汰�工学の体系化と定着：各現場で役立つ実践的な技術や膨大な知見を体系化した「保全ハンドブック」を活用し、我が国に原子力実践工学を定着させる。
すなわち、防衛大学校の学生のように高い志と使命感をもって問題解決型の実践的な知識を学ぶとともに諸訓練に励む姿や、仏国のエコール・ポリテクニクの卒業生のように豊かな知識と優れた技術を有するだけではなく国民から信頼され尊敬される超エリート指導者を輩出する学校経営をイメージしている。
以上の趣旨を実現する機関として「原子力大学校」（第1フェーズ）及び「原子力人材活用委員会」（第2フェーズ）の設立を提言する。原子力大学校と原子力人材活用委員会との関係は図-1に示すとおりである。
５．原子力大学校の制度設計
・国内の大学群（大学、大学院）・高校群（高校、高専）の卒業生及び海外研修生を受け入れる3コースを設ける。専門は問わず、国内外で活躍したいという強い意志と一定の語学力を有する者とする。原則、5年制（大卒以上、海外研修生）・4年制（高卒以上）とする。
・教育方針は、原子力実践工学を重視するほか工学の根幹思想、原子力倫理、心理学等広い見識と豊かな人間性を涵養するカリキュラムを履修させる。また、国内外の原子力施設の現場での実践研修、海外派遣留学やボランティア活動等の研修プログラムを充実させる。
・指導体制は、現役技術者や規制官等を教授・講師に迎え、最先端の技術や情報に基づく指導を実践し、また、国際化を目指し、海外原子力機関等の専門家を教授に招聘する。
・卒業生の資格は、国が定めた審査を経て、一般の大学・大学院の卒業生・修了生と同等の資格を有するものとする。
・全員が一定期間を学生寮で生活し、経費は支給される。これとは別に毎月の学生手当と期末手当が支給される。
・第2フェーズとして設立される「原子力人材活用員会」には、原子力大学校卒業生の積極的な受け皿としての機能を与える。卒業生のうち「原子力人材活用委員会」に登録された者は、原子力事業者及び管轄省庁の中核的な指導者に相応しい“生涯年収とポスト”を確保できる。
おわりに
現在原子力界が直面する課題を根本的に解決するには、原子力教育のパラダイム変換を図り、我が国の原子力界を復活・活性化させる中核指導者を育成することが急務と考え、原子力大学校を提言した。教育の効果は時間が経たないと得られないものであり、常に長期的な観点からその成果を判断しなくてはならない。この大学を設立してから最初の卒業生が社会に巣立つまでに少なくとも4年が必要であり、今学生を集めても2020年まで成果が得られないという現実がある。関係者の努力により、一刻も早くこの大学の設立が実現することを切に期待したい。
政府の教育再生実行会議（座長・鎌田薫早稲田大総長）は、「特に優れた才能を秘めた人材の発掘・育成のためには画一的な教育から脱し、従来の学習指導要領にとらわれずに多様な教育の機会の提供が必要である」と提言している。原子力大学校は、この“先駆け”となり、卒業生が卓越した才能を発揮し、我が国の原子力界の中核指導者として活躍することを願っている。
本構想へのご意見、ご感想があればお寄せください。
メールアドレス ：ioj-jimukyoku@ioj-japan.com
参考（PDF） ：原子力大学校の設立提言書（Ver.2）平成27年3月1日 NPO日本の将来を考える会
（飯島 一敬 記）
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はじめに
福島第一原子力発電所の事故から早くも4年以上が経過し、発電所周辺市町村の残留放射線は大幅に減少していて、帰還困難区域（5年を経過してもなお、年間積算放射線量が20mSvを下回らないおそれのある、計測時点で年間積算放射線量が50mSvを超える区域）
１．はじめに
小泉純一郎元総理（以下、小泉氏）の脱原発に関する発言をまとめたものがネットに公開されている。読んでみて驚いた。発言内容はいとも単純で同じことの繰り返しだ。これこそシステム１（直感）に基づいた典型的な発言ではないかと思う。
１）日本が原発の安全性を信じて発信してきたのは過ちだった。（日本食育学会・講演）
[ 日本の原発が４０年間安全にかつ安価で安定した電力を供給してきた実績を無視している。原発は長期小泉政権の維持にも貢献したのではないか。]
２）原発が絶対に安全かといわれるとそうではない。これ以上、原発を増やしていくのは無理だと思う。（同学会講演）
[ 原発だけでなくあらゆる構造物の絶対安全は目標であって永遠に実現できない。これで困らないようにしてきたのが人知。人間は目標達成に向け安全性を高めて行くことしかできない。]
３）原発への依存度を下げ、世界に先駆けて自然エネルギーを推進しないといけない。（同学会講演）
[ 安倍政権は自然エネルギーを推進している。しかし、原発をベースロード電源としないと自然エネルギーの活用は難しい。大量の化石燃料をベースロード電源にすると環境破壊がひどくなる。
１．誤解の分類と構造
誤解の原因は、問題の理解が論理的に正しくない場合と心理的なバイアスや直観的錯誤に起因する場合に大別できる。前者を論理的誤解、後者を心理的誤解、と呼ぶ。論理的誤解は正しい理解をしている人に正してもらえば問題なく解決できる。それ故、ここでは取り上げない。原子力の場合、心理的誤解が問題である。
誤解の研究（１）では、アンカー効果に基づく心理的誤解について分析した。論理的理解であるべきものが心理現象である“アンカー効果”によって歪められるという現象である。“放射能への恐れ”について、誤解の研究（１）で述べた内容を整理しなおすと以下のようになる。誤解の有りようは、
“アンカー効果”がシステム１に起因する直感的把握にバイアスを及ぼす初期過程、
正しいかどうかは別にして、それらの心理現象に基づいて、システム１とシステム２（論理的思考）が協業して論理的に納得のいくシナリオを作り上げ、それに自らが満足するという中間過程、
２つの過程を経た後、そのシナリオの中に安住でき他人の説得に馬耳東風でいられる状況、
という３つの過程が誤解形成のメカニズムである。