1.まえがき
2022年2月24日に開始されたウクライナ戦争は、約1年半を迎えた現在もその帰趨は予測できないが、世界の原子力発電に与えつつある影響については、その様相がある程度見えてきたように思う。ウクライナ戦争が世界の原子力発電に及ぼす影響について、現状を把握するとともに、今後の見通しについて私見を述べたい。
1.まえがきSEJだより第32号で指摘した通り、傷んだ日本の原子力発電を復活させるためには、これまでのやり方を現実を踏まえたものに見直すことが必要である。現状を認識するとともに、どのように変革、改革をすることによって原子力発電が再び日本の主幹電源となり得るのか、検討を行ったので、ここにその成果を含め提言を行いたい。
1.まえがき
政府はこれまでの原子力政策の見直しを行ない、原子力エネルギーの活用が日本にとって必要かつ重要であることを明確化し政策を転換した。
これは、福島第一事故後の原子力政策の大転換で高く評価されるものであるが、首相と政府が方針を打ち出しただけで、福島事故後の12年間で傷んだ日本の原子力界の回復と活性化が自動的に達成できるものではない。本報では、日本の原子力の現状と対策について「日本のエネルギーを考える会」の会員が議論した結果について記し読者の評価を待ちたい。
我が国の原発は東日本大震災(以下震災)以前にはBWRを含め54基が稼働していた。現在10基のみが再稼働しているに過ぎない。 再稼働しているのはPWRのみであるが、震災前に稼働していた24基のうち、震災以降8基が廃炉となり、現時点で新規制基準の審査を受けているものが4基、設置変更の許可を受けたものが2基である。詳細は図1「原子力発電所の現状」をご覧いただきたい。このような状況の中でも原子力のサプライヤーは将来に向けた戦略を立てている。そこでサプライヤーの取り組みを調べてみた。
SEJだより 第30号 南海トラフ地震被害で関東以西の電力が2割しか供給できない状態に ―地震後の日本の復興のためには原発は不可欠―
- カテゴリ: エネルギー 2023-2-4 19:47 閲覧 (1468)
気象庁のデータによると、南海トラフ地震の震源域では予想震源強さがM8~M9級の巨大地震が今後30年以内に約80%の確率で発生するという。この地震により、西日本から関東にかけての太平洋岸で大津波が発生し、津波による犠牲者は40万人超になるとの想定もある。ここでは、津波による関東以西の発電所が被るダメージを把握する検討した。地震発生後1〜2年間にわたって、東京電力と中部電力、中国電力管内で大規模な電力不足に陥り、日本の政治中枢や経済機能に大きなダメージを与える可能性がある。
EUは持続可能な経済の実現を目指した成長戦略を立てている。そのため、「欧州グリーンディール」や「2050年までに温室効果ガスを実質排出ゼロ(気候中立)とするという目標」を定めた。そこへ向かって経済活動を誘導する枠組みを定めるのがEUタクソノミーであるといえる。当初EUタクソノミーの枠組みに原子力が含まれていなかった。その後賛成・反対の議論が行われたうえで原子力(天然ガスも)を含める補完委任規則がEU委員会によって提案され、2022年7月6日に欧州議会によって承認された。
地球表面積当たりの太陽エネルギーは極めて希薄であり、発電設備の設置には広大な土地を必要とする。SEJだよりでは、これまでに土地利用にともなう環境破壊が現実性を帯びていること、更には営農型など農地利用の太陽光発電が食料自給率の低下につながる懸念があることなどを明らかにしてきた。
1.はじめに 本サイトの「SEJだより第24号」“脱炭素社会におけるエネルギーキャリアーとしての水素の役割(その一)”で水素製造に関わる課題について報告し、更に製造した水素の輸送関しては(その二)で検討した。ここでは水素需要の際の課題について考えてみる。
SEJだより 第26号 脱炭素社会でのエネルギーキャリアーとしての水素の役割 (その二) ー水素の輸送(水素は経済的に成立するか)ー
- カテゴリ: エネルギー 2022-8-7 7:00 閲覧 (1438)
<本サイトの「SEJだより第24号」“脱炭素社会におけるエネルギーキャリアーとしての水素の役割(その一)”で水素製造に関わる課題について報告したが、ここでは製造した水素の輸送と貯蔵の課題について考えてみる。尚、水素需要については(その三)で述べる予定。
現時点のアメリカのクリーンエネルギー計画の原子力開発及び、日米協力の着目点として、2022年に入ってから国内でもにわかに注目を浴びている多目的試験炉(VTR)計画がある。この計画に至るまで、アメリカ国内において政治、経済、研究開発等の各分野で多くの議論がなされてきている。その中で、日本の原子力を考えるうえで参考とすべき点を中心に纏めたい。