第5次エネルギー基本計画が閣議決定された。再エネは発電での「主力電源化」だが,このまま原子力の推進が進まないと日本の将来はどうなるか、心配する会員の声をお届けしま。
はじめに
私たちは、これまでに原発の再稼働をしなければ間もなく日本経済に甚大な影響が出るばかりでなく、脆弱なエネルギー・セキュリティの結果、将来の日本の存立すら危うくなってしまうと言い続けてきました。
なぜならば、中国、インド、アフリカ諸国など発展途上国は急速に近代化を進めており、数十年もすれば、現在世界で消費されているエネルギーに匹敵するほどの需要が爆発的に増えることが予見されているからです。
そのような事態となった時には、ほとんどの化石燃料を海外に依存している資源小国の日本は、化石燃料を入手できなくなる可能性が高く、頼りになるのは国産エネルギーである再エネと原子力しか無いという状況になるからです。 再エネも原子力もそれぞれ問題があるがとにかく育てる必要があり、今からしっかりと対応をしていかなければ、日本は壊滅的な事態を招いてしまいます。これはまさに国難というべきでしょう。
再エネは色々問題点を抱えながらも、それなりに普及も進んでいますが、原子力を見てみると、停止してしまった原子炉で再稼働を実現できたのは9基だけという悲惨な状況にあります。今回、再稼働になぜこれ程時間が掛かかるのか、その事由について考えてみました。
1. 罪深い政治の影響
福島第一原発事故の際の政権トップにいた菅元首相が何を勘違いしたか自分が原子力の専門家のような行動をとり、事故の拡大、被害収束の遅延に大きく関与したことは、関係者であれば殆どの人が指摘している。
また、民主党政権は官僚を排除すると公言してはばからず、事故の収束に必要な知恵を官僚ではなく一部原発反対勢力から得ると同時に、菅元首相自らがデタラメな指揮を行った。最大の問題は、1mSvという年間被曝量の上限を設けて放射能汚染を過大に評価し、多くの住民を強制的に居住区からはじき出したことにある。民主党が打ち出したこの制限値は、長期的目標としては容認できるものの、事故被害の収束を図る過程では過剰に安全側に偏っており、放射能汚染についての現在の世界の常識値(20mSv〜100mSv)を大きく下回っている。
これに加えて、菅元首相が置き土産として設立した原子力規制委員会では、民主党が意図的に偏向した人間を選任し、5人の委員が個人的な考え方に固執して本来の仕事を実質的に放棄したので、審査が大幅に遅れている。とりわけ、島崎元委員は、自分の専門領域の宣伝に終始し、審査の過程で非科学的な指摘を重ね、原子炉の安全性を高めることがなかったばかりか、無意味な大量の作業を全ての電力会社に強要するという犯罪的な行為を行っていた。此れ等の積み重ねが、過剰規制と相まって現在の再稼働遅延を引き起こしていることは明白である。
2. 一部マスコミ(朝日新聞、NHK等)の影響 罪深い政治の影響
しかし、政治の影響だけではない。マスコミはこれ等の事実を取り上げないし、相変わらず風評被害の基になるフェークニュース報道に終始している。不勉強なマスコミ関係者は正確な技術的事項を理解できるはずもなく、いい加減なお涙頂戴の報道を続けてきた結果、国民は放射線影響の実態もわからぬままに、「放射線怖い」症候群に因われている。
それに加えて、朝日新聞などは、再生可能エネルギーを大量導入すれば日本の電力需要はまかなえるという嘘に基づき、ひたすら原発反対の報道を続けている。
私たちは、太陽光、風力などの自然エネルギーは需要とは無関係に天候で変動する電源であるために、受給を一致させるためには調整電源が必要であること、あるいは蓄電技術が飛躍的に進歩しなくてはならないことを説明してきた。これらの事実は官僚も含めて認識されているが、不勉強のマスコミは聞こえないふりをして、間違った幻想で国民を騙し続けている。
3. 政権政党と官僚の不作為 一部マスコミ(朝日新聞、NHK等)の影響
自民党も官僚も,原発無しでは電力供給においていずれ危機的状況が訪れることは認識しているが、野党及び一部マスコミの影響を受けた多くの国民が原発に否定的な考えを持つようになっているとの畏れから、積極的に原発推進を言い出せないでいる。
現在の連立政権でも支持率の低下を心配して「原子力の比率を可能な限り下げてゆく」との文言をその政策の中に入れてしまったために、自縄自縛に陥っているといえよう。自民党の閣僚の中にも、自然エネルギーの限界について十分に学習もせずに、2050年には100%を自然エネルギーで賄えるとの夢物語を公言している無知で不勉強な議員もいる。このような、政治家が居る限り、原発の再稼働促進の方が夢になってしまう。
4. 原子力関係者(とりわけ放射線影響学者)の努力不足
マスコミがデタラメなフェークニュースをあたかも真実であるかのように報道しても、原子力関係者は効果的な反論を公の場所で積極的には行わない。少なくとも、マスコミに取り上げられるような努力はしていない。仲間内の会議などで「おかしい」、「ダメだ」と言っていても何も状況は改善しない。もっと、大規模な活動を原子力関係者が集まって実施しなくて、どうして現状の改善ができるというのか。
放射線影響学会の学者の努力不足も重大な問題である。線量が小さくても影響があるというLNT仮説の間違いは既に多くの場で指摘されているにも拘わらず、積極的に国民に説明しようとしていない。関係機関がそのホーム・ページで詳細に説明していると関係者は言うであろうが、国民に届いていないのでは、説明していないのと同じことである。厚生労働省、文部科学省、経済産業省など、官僚も含めて今すぐに積極的かつ全国的に説明活動を活発化しないと、日本は重大な危機に陥ってしまうであろう。
5.教育界の怠慢
日教組が日本の教育を破壊してきたことは既に歴史的事実だと思われるが、その悪影響の残渣として今の日本の教育界は「臭いものには蓋」の精神が蔓延しているのではないか。
エネルギー問題は国家の根幹を揺るがし得るので、学齢の早い時期から教えるべきであるが、実行されていないのではないか。
太平洋戦争が米英蘭中の石油禁輸措置から始まったことは既に歴史的事実として認識されており、このような事態の再来を危惧して原子力開発を職業として選択した若者が多かったという事実は教えられていないであろう。あるいは、放射線影響についても簡単で良いので「単に怖れるのではなく、正しく理解して怖れる」という教育のできる初等教育者がどの位居るのであろうか。若者たちは老人程原子力アレルギーに犯されておらず、比較的冷静に原子力の必要性を認識しているようであるが、乳幼児の母親、父親世代が乳幼児への放射線影響を過大に恐れているとの情報もあり、教育指針の改定と共に質の高い原子力教育が望まれるのである。
6.国民のマスコミ偏重、政治軽視
私たちは154号で、日本人の72.5%がマスコミ報道を信じているという衝撃的なデータを伝えた。そして、それほどまでの信頼に値する報道を日本のマスコミはしているのかという疑問を投げかけた。
太平洋戦争当時のデタラメな大本営発表に加担した新聞が、戦後は手のひらを返して民主主義の権化のような態度で報道をしていることに多くの日本国民が何の疑問を抱かずに信頼していることが、データから読み取ることができるのである。自ら考え、自らの意見を持つことがいかに大切か、初等教育の段階から教え込まないとこの風潮を変えることはできないのではないか。
一方、政治家を馬鹿にする風潮もかなり激しいものがある。マスコミは政治家のスキャンダルを大々的に報道するので、国民はいつの間にか「政治家は馬鹿」と思い込むようになってしまったのではないか。また、元学生運動家は論理の飛躍などものともせず、夢物語で人をたぶらかす訓練を受けた者達なので、聞いていると何か良い事を言っているように錯覚させるのである。
政治家を馬鹿にする前に、その様な政治家しか選ばない選挙民の民度が低いと考えて、自らを高める努力の方が必要なのではないだろうか。
終わりに
ではどうすればこの国難から脱出できるのか?教育改革が最優先課題であるが、それでは時間が掛かり過ぎて今の問題の解決には間に合わない。現在日本が置かれているエネルギー環境を正しく理解し、好い加減なマスコミの報道に惑わされないように国民一人ひとりがエネルギー問題について正しく理解すべき時が来たのであろう。
正しく理解するためには、ある程度の学習も必要となり、電気代の高騰、停電がこのような学習の契機になるのであるが、日本の電力会社は誠実に供給義務を果たすというDNAが強いので、本当に停電が避けられない事態になるまで死に物狂いで供給を続けるであろう。そのような努力が結果的には「茹でガエル」を作ることにしかならず、気付いた時にはもう遅いという悲惨な状況となる。そして、そのような時が来れば戦争も起こりかねないということは歴史が証明している。
私達は、今や危機に遭遇する直前にあるのだという認識を持ち、ひたすらエネルギー確保のための方策を正しく理解し、実践する以外にこの国難から脱出できないのではないだろうか。
(伊藤英二記)
ページのトップへ戻る
印刷(pdf)はこちらから
IOJだより pdf
第5次エネルギー基本計画が閣議決定された。再エネは発電での「主力電源化」だが,このまま原子力の推進が進まないと日本の将来はどうなるか、心配する会員の声をお届けしま。
はじめに
私たちは、これまでに原発の再稼働をしなければ間もなく日本経済に甚大な影響が出るばかりでなく、脆弱なエネルギー・セキュリティの結果、将来の日本の存立すら危うくなってしまうと言い続けてきました。
なぜならば、中国、インド、アフリカ諸国など発展途上国は急速に近代化を進めており、数十年もすれば、現在世界で消費されているエネルギーに匹敵するほどの需要が爆発的に増えることが予見されているからです。
そのような事態となった時には、ほとんどの化石燃料を海外に依存している資源小国の日本は、化石燃料を入手できなくなる可能性が高く、頼りになるのは国産エネルギーである再エネと原子力しか無いという状況になるからです。 再エネも原子力もそれぞれ問題があるがとにかく育てる必要があり、今からしっかりと対応をしていかなければ、日本は壊滅的な事態を招いてしまいます。これはまさに国難というべきでしょう。
再エネは色々問題点を抱えながらも、それなりに普及も進んでいますが、原子力を見てみると、停止してしまった原子炉で再稼働を実現できたのは9基だけという悲惨な状況にあります。今回、再稼働になぜこれ程時間が掛かかるのか、その事由について考えてみました。
1. 罪深い政治の影響
福島第一原発事故の際の政権トップにいた菅元首相が何を勘違いしたか自分が原子力の専門家のような行動をとり、事故の拡大、被害収束の遅延に大きく関与したことは、関係者であれば殆どの人が指摘している。
また、民主党政権は官僚を排除すると公言してはばからず、事故の収束に必要な知恵を官僚ではなく一部原発反対勢力から得ると同時に、菅元首相自らがデタラメな指揮を行った。最大の問題は、1mSvという年間被曝量の上限を設けて放射能汚染を過大に評価し、多くの住民を強制的に居住区からはじき出したことにある。民主党が打ち出したこの制限値は、長期的目標としては容認できるものの、事故被害の収束を図る過程では過剰に安全側に偏っており、放射能汚染についての現在の世界の常識値(20mSv〜100mSv)を大きく下回っている。
これに加えて、菅元首相が置き土産として設立した原子力規制委員会では、民主党が意図的に偏向した人間を選任し、5人の委員が個人的な考え方に固執して本来の仕事を実質的に放棄したので、審査が大幅に遅れている。とりわけ、島崎元委員は、自分の専門領域の宣伝に終始し、審査の過程で非科学的な指摘を重ね、原子炉の安全性を高めることがなかったばかりか、無意味な大量の作業を全ての電力会社に強要するという犯罪的な行為を行っていた。此れ等の積み重ねが、過剰規制と相まって現在の再稼働遅延を引き起こしていることは明白である。
2. 一部マスコミ(朝日新聞、NHK等)の影響 罪深い政治の影響
しかし、政治の影響だけではない。マスコミはこれ等の事実を取り上げないし、相変わらず風評被害の基になるフェークニュース報道に終始している。不勉強なマスコミ関係者は正確な技術的事項を理解できるはずもなく、いい加減なお涙頂戴の報道を続けてきた結果、国民は放射線影響の実態もわからぬままに、「放射線怖い」症候群に因われている。
それに加えて、朝日新聞などは、再生可能エネルギーを大量導入すれば日本の電力需要はまかなえるという嘘に基づき、ひたすら原発反対の報道を続けている。
私たちは、太陽光、風力などの自然エネルギーは需要とは無関係に天候で変動する電源であるために、受給を一致させるためには調整電源が必要であること、あるいは蓄電技術が飛躍的に進歩しなくてはならないことを説明してきた。これらの事実は官僚も含めて認識されているが、不勉強のマスコミは聞こえないふりをして、間違った幻想で国民を騙し続けている。
3. 政権政党と官僚の不作為 一部マスコミ(朝日新聞、NHK等)の影響
自民党も官僚も,原発無しでは電力供給においていずれ危機的状況が訪れることは認識しているが、野党及び一部マスコミの影響を受けた多くの国民が原発に否定的な考えを持つようになっているとの畏れから、積極的に原発推進を言い出せないでいる。
現在の連立政権でも支持率の低下を心配して「原子力の比率を可能な限り下げてゆく」との文言をその政策の中に入れてしまったために、自縄自縛に陥っているといえよう。自民党の閣僚の中にも、自然エネルギーの限界について十分に学習もせずに、2050年には100%を自然エネルギーで賄えるとの夢物語を公言している無知で不勉強な議員もいる。このような、政治家が居る限り、原発の再稼働促進の方が夢になってしまう。
4. 原子力関係者(とりわけ放射線影響学者)の努力不足
マスコミがデタラメなフェークニュースをあたかも真実であるかのように報道しても、原子力関係者は効果的な反論を公の場所で積極的には行わない。少なくとも、マスコミに取り上げられるような努力はしていない。仲間内の会議などで「おかしい」、「ダメだ」と言っていても何も状況は改善しない。もっと、大規模な活動を原子力関係者が集まって実施しなくて、どうして現状の改善ができるというのか。
放射線影響学会の学者の努力不足も重大な問題である。線量が小さくても影響があるというLNT仮説の間違いは既に多くの場で指摘されているにも拘わらず、積極的に国民に説明しようとしていない。関係機関がそのホーム・ページで詳細に説明していると関係者は言うであろうが、国民に届いていないのでは、説明していないのと同じことである。厚生労働省、文部科学省、経済産業省など、官僚も含めて今すぐに積極的かつ全国的に説明活動を活発化しないと、日本は重大な危機に陥ってしまうであろう。
5.教育界の怠慢
日教組が日本の教育を破壊してきたことは既に歴史的事実だと思われるが、その悪影響の残渣として今の日本の教育界は「臭いものには蓋」の精神が蔓延しているのではないか。
エネルギー問題は国家の根幹を揺るがし得るので、学齢の早い時期から教えるべきであるが、実行されていないのではないか。
太平洋戦争が米英蘭中の石油禁輸措置から始まったことは既に歴史的事実として認識されており、このような事態の再来を危惧して原子力開発を職業として選択した若者が多かったという事実は教えられていないであろう。あるいは、放射線影響についても簡単で良いので「単に怖れるのではなく、正しく理解して怖れる」という教育のできる初等教育者がどの位居るのであろうか。若者たちは老人程原子力アレルギーに犯されておらず、比較的冷静に原子力の必要性を認識しているようであるが、乳幼児の母親、父親世代が乳幼児への放射線影響を過大に恐れているとの情報もあり、教育指針の改定と共に質の高い原子力教育が望まれるのである。
6.国民のマスコミ偏重、政治軽視
私たちは154号で、日本人の72.5%がマスコミ報道を信じているという衝撃的なデータを伝えた。そして、それほどまでの信頼に値する報道を日本のマスコミはしているのかという疑問を投げかけた。
太平洋戦争当時のデタラメな大本営発表に加担した新聞が、戦後は手のひらを返して民主主義の権化のような態度で報道をしていることに多くの日本国民が何の疑問を抱かずに信頼していることが、データから読み取ることができるのである。自ら考え、自らの意見を持つことがいかに大切か、初等教育の段階から教え込まないとこの風潮を変えることはできないのではないか。
一方、政治家を馬鹿にする風潮もかなり激しいものがある。マスコミは政治家のスキャンダルを大々的に報道するので、国民はいつの間にか「政治家は馬鹿」と思い込むようになってしまったのではないか。また、元学生運動家は論理の飛躍などものともせず、夢物語で人をたぶらかす訓練を受けた者達なので、聞いていると何か良い事を言っているように錯覚させるのである。
政治家を馬鹿にする前に、その様な政治家しか選ばない選挙民の民度が低いと考えて、自らを高める努力の方が必要なのではないだろうか。
終わりに
ではどうすればこの国難から脱出できるのか?教育改革が最優先課題であるが、それでは時間が掛かり過ぎて今の問題の解決には間に合わない。現在日本が置かれているエネルギー環境を正しく理解し、好い加減なマスコミの報道に惑わされないように国民一人ひとりがエネルギー問題について正しく理解すべき時が来たのであろう。
正しく理解するためには、ある程度の学習も必要となり、電気代の高騰、停電がこのような学習の契機になるのであるが、日本の電力会社は誠実に供給義務を果たすというDNAが強いので、本当に停電が避けられない事態になるまで死に物狂いで供給を続けるであろう。そのような努力が結果的には「茹でガエル」を作ることにしかならず、気付いた時にはもう遅いという悲惨な状況となる。そして、そのような時が来れば戦争も起こりかねないということは歴史が証明している。
私達は、今や危機に遭遇する直前にあるのだという認識を持ち、ひたすらエネルギー確保のための方策を正しく理解し、実践する以外にこの国難から脱出できないのではないだろうか。
(伊藤英二記)
ページのトップへ戻る
印刷(pdf)はこちらから
IOJだより pdf