SEJ　日本のエネルギーを考える会 - 147号　　進展する米国の地層処分場　－ユッカマウンテン地層処分場の概要

147号　　進展する米国の地層処分場　－ユッカマウンテン地層処分場の概要－

カテゴリ: 原子力政策 » 地層処分 2017-8-27 22:30 閲覧 (1737)

米国では,オバマ政権下ではユッカマウンテンは棚上げになってしまったが、トランプ政権下では、再びユッカマウンテンの許認可を進めるための予算が計上された。最終処分場問題の進展が期待されます。

平成29年7月28日に国（経済産業省・資源エネルギー庁）は地層処分に関する「科学的特性マップ」を公表した。地層処分地の選定に関し国が前面に立って活動を進める第一歩です。米国の例は、今後の日本の処分場選定を進めるうえで大きな参考となるので調べてみました。オバマ政権下ではユッカマウンテンは棚上げになってしまったが、トランプ政権下では、再びユッカマウンテンの許認可を進めるための予算が計上されました。トランプ政権のこのような方針で、これからの進展が期待されます。2017年8月8日付で、NRCは、委員会がユッカマウンテンの裁定再開のための予算を認めたと報じました。これからの米国の動きは、日本の活動に大きな影響を与えるため目が離せません。これを機会にユッカマウンテンの地層処分場の概要についてまとめてみました。

1.米国の放射性廃棄物にはどんなものがあるか

①商業発電所から発生した使用済み燃料が63000トン（重金属換算）、

②使用済み燃料の再処理によって発生した高レベル放射性廃棄物4667トンで合計70，000トン

③エネルギー省(以下DOE)保有の使用済み燃料（研究炉と軍用分）が2333トン

2. ユッカマウンテン周辺の地質構造

ネバダ州にあるユッカマウンテンの周辺の岩盤は、約1000万年以上前の火山灰が堆積した凝灰岩です。年間の降水量が少ない砂漠地帯にあります。地下水面は地表から500～800mのところにあります。

3.処分場の概念
処分場は、地表から200～500mの深さ、地下水面から平均約300ｍ上部
に建設すると考えられている。処分場の規模は総面積が約5k㎡、処分坑道の延長距離は
約64kmあります。

4.処分事業の実施体制
米国では、1982年放射性廃棄物政策法により高レベル放射性廃棄物
及び使用済み燃料の処分の責任は連邦政府にあると定められています。連邦政府の実施体制は図のようになります

5.処分地の選定の流れ

2015年放射性廃棄物管理法の法案では、
図の流れでサイト選定を進めることとなっています。

6. 安全確保
　ユッカマウンテン・サイト適合性指針（10CFR Part963）に従って処分場の閉鎖前及び閉鎖後の期間でのサイト適合性が判断されます。閉鎖前には、処分場が本来の機能を果たし、発生確率が1万分の1以上の事象による影響を防止できるか、あるいは軽減、できるか、安全基準に照らし合わせて評価します。閉鎖後の期間の安全性についてはトータルシステム性能評価（TSPA）を用いて評価されます。評価システムと評価結果を図に示します。
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7.地域振興策
　立地地域の財政支援として、立地を受け入れたネバダ州と関係10郡に対し、使用目的に制限のない補助金の交付や国が行う処分場開発活動に対する課税相当額を補填する制度が設けられています。

8.処分事業の透明性確保
　処分事業の透明性確保について1982年放射性廃棄物政策法に基づいて、以下のことが行われています。
・情報提供と住民のコメント募集
・地元の意思表明と許認可手続きへの参加
　地元ネバダ州には、サイト推薦に不承認の意思を表明することが認められていますが、連邦議会はそれを覆すことが可能とされています。実際2002年7月に連邦議会の立地承認決議が行われました。

9.まとめ
　ブルーリボン委員会こちらからが2012年1月に公表した最終報告書では、放射性廃棄物管理・処分施設の立地プロセスは、以下の条件を満たす場合に成功の可能性が高くなるとしています。
　１）同意に基づいている。
　２）透明性がある。
　３）段階的である。
　４）適応性がある。
　５）基準及び科学に基づいている。
　６)実施主体と受け入れ先の州、地方自治体との間のパートナーシップ契約または法的に強制力のある協定があると、これに基づき協議できる。
日本でも、政府、NUMOは基本的に、１）～５）を確保するように活動していると考えます。　

以下に日米の地層処分場の取り組みの比較を示します。（表参照）。