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SEJ 日本のエネルギーを考える会

140号 エネルギーの将来を考えましょう(4) ―安全性が確認された原子力発電所は直ちに再稼働をさせるべき―


カテゴリ:  エネルギー    2017-3-14 20:10   閲覧 (1515)


現在、「再生可能エネルギーに頼れば問題が解決する」という無責任な空気が日本全体を覆っています。それだけで「大量の電力を必要とする先進国たる日本の電力需要が全て賄える」という考えには、これまでのシリーズで説明してきたように、大いに異論があります。

再生可能エネルギーに頼る前に、まずは安定した電力を確保することから始めないと、日本の経済は破綻し、国民生活が大きく損なわれる恐れがあります。既に安全性が福島事故以前と比較して飛躍的に高まっている原子力発電所を直ちに再稼働させ、良質な電力需給に不安のない状況を構築してから、じっくりと将来の電源構成に必要な対策を施してゆくのが、今の時代を生きている私達の義務ではないでしょうか。
そのため、まず以下の問題点を検討してみましょう。

1.時間軸が考えられていないこと
2.費用対効果が無視されていること
3.日本の原子力発電所の安全性の向上について十分な説明がなされていないこと
4.海外諸国の原子力開発の状況について十分な説明がなされていないこと
5.一部のマスコミの無責任な報道と放射線教育の欠如が、被曝の影響を過大に恐れさせていること
6.民主党政権時代の誤った除染基準などを修正できないでいること
7.まだ電力不足の決定的な事態が起きていないこと


1.時間軸が考えられていないこと


  多くの原子力発電所は安全対策も施されていつでも再稼働できる準備が整っています。今すぐに30%近くの電力供給を担うことができる状態です。一方、再生可能エネルギーの利用については、太陽光、風力による発電設備は続々と建設されていますが、変動電源であることから技術的に改善すべき課題が残っています。調整用電源が十分に整備されるか、発電された電力を蓄電により安定電源として系統に流すように送電線網が出来るまでは無制限に増やすことはできず、時間のかかる開発作業が必要です。
 調整電源として揚水発電所を建設するとしても適地が限られている上、建設には15年程度の期間が掛かります。 潮流発電なども未来の電源として有望でしょうが、供給側の電源としてある程度の規模となる時期はまだ不明です。 このように、いつ実用化がなされるか分からない技術、発電方式に依存できると考えることが大きな問題です。

2.費用対効果が無視されていること


現在の技術でも、膨大な数の蓄電池を並べ且発電箇所に送電線網が出来れば、太陽光、風力によって発電され電力を蓄えておき、安定電源として系統に流すことは可能です。また、調整用の揚水発電所を建設するには数千億円掛かるのですが、この建設費は事業者が負担し電気代として消費者に転嫁されます。太陽光・風力等不安定電力の調整用の電源を確保するには莫大な費用が掛かるのですが、ここに注目した報道がなされることはほとんどありません。問題を現実的に解決するために限られた資金をいかに有効に使うのか、良く考える必要があります。(図は北海道から本州に送電線を引くのに要する費用の例)


3.日本の原子力発電所の安全性の向上について十分な説明がなされていないこと


  139号では、日本の原子力発電所が飛躍的に安全性を高めていることを説明しました。経産省の資料や原子力規制委員会の資料をよく読めば具体的な改善の内容が理解できますが、政府もマスコミもなぜか国民に向かって分かり易く説明をしようとはしていません。やはり、反原発の空気に水を差す気概を持って、原子力発電所の向上した安全性を積極的に説明をする必要があります。


4.海外諸国の原子力開発の状況について十分な説明がなされていないこと


 日本での事故を受けて稼働を停止した原子力発電所は、海外には無いと言って良いでしょう。それどころか、中国では、現在運転中が31基、建設中が24基あり、これがすべて完成すると日本の54機を抜き去ってしまいます。さらに2030年に2億KWを原子力発電とすることを目標にしていますので、間もなく百基を超える原子炉が稼働することになります。このような状況下で、日本だけが反原発の空気に流されて原子力発電所の再稼働を遅らせていることが如何に無意味か、積極的な説明が必要です。



5.一部のマスコミ報道と放射線教育の欠如が、被曝の影響を過大に恐れさせていること


 放射線は一般的には危険ですが、少量でも被曝したら危険というものではありません。多くの学者、専門家が福島事故の結果原発敷地外に排出された放射線量ではほとんど影響がないと言い切っています。チェルノブイリで起こったような小児の甲状腺がんも見つかっておりません。それにも関わらず、NHKを始め朝日、毎日などの反原発新聞が放射線の影響や福島原発の状況をオドロオドロシク報道してきたために、多くの国民が放射線アレルギーとも言える精神状態に陥っています。きちんと放射線教育がなされていれば、日本中が「放射線コワイ病」に罹ることはなかったと思われますが、義務教育段階で放射線教育をしなかった悪影響が露骨に出てきてしまいました。それが、原発の再稼動が進まない大きな理由となってしまっていますので、状況改善の努力が必要です

6.民主党政権時代の誤った除染基準などを修正できないでいること


  自民党議員も選挙で選ばれますので、「放射線コワイ病」に罹ってしまった選挙民が投票をすると考えると、安易に再稼働を言い出せないというジレンマに陥っています。民主党政権が設定した1mSvという除染目標がいかに馬鹿げた数値であるか分かっていても、マスコミが原発反対50%などと報道すれば、動くことができなくなってしまいます。このような空気が再稼働遅延の大きな原因となっています。


 

7.まだ電力不足の決定的な事態が起きていないこと


反対派は「原発が動いていなくても電力不足は起こっていない」と言っています。これまでに私たちは何回も、化石燃料調達のために年間3兆円もの外貨を吐き出してきたという事実を伝えてきました。また、世界的に非化石化を行わないと地球温暖化によって人類が滅びるかも知れないという危機感を海外の多くの国が共有しています。日本だけが、大停電という事態が起こっていないことを理由に、すぐにでも動かせる原子力発電所を止めておいて、化石燃料を使い続けて良いのでしょうか?炭酸ガスを排出し続けて良いのでしょうか?



終わりに


今一度冷静に全ての条件を勘案して、日本にとってのバランスのとれた電源構成について考えるべき時が来ていると思います。私たちが提案するバランスある電源構成とは、原子力発電を当面排除することなく、再生可能エネルギーを技術的に無理のない程度に導入し、将来も安定したエネルギー・セキュリティーを確保しながら、実現可能性が高い構成比を実現することです。(図参照)


経産省のデータによる震災前10年間の平均電源構成は、化石燃料(LNG+石炭+石油)で62%、再生可能エネルギーが11%(9%が水力)、原子力が27%となっていました。この化石燃料分を水力で10%、バイオマスで9%、その他の再生可能エネルギーで25%、合計44%以上を賄うことを目標値とし、不足する分は当面は火力と原子力で賄なわざるを得ません。これ等目標の実現には長期間を要しますので、今動かせる原子力発電所を直ちに稼働させ、原子力発電所、再生可能エネルギー発電所などの稼働にあわせて、火力発電所を順次閉鎖してゆくという段取りが必要です。最終的には、火力発電所を完全に廃止して、エネルギー消費全体でCO2の排出を80%削減することを目標にするのです。この目標の達成をCOP21が目標としている2050年とするのが合理的であると考えます。
 次号からは、「2050年へのアプローチ」と題して、具体的にいま何が問題で、何をなすべきかをお伝えしたいと思います。



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140号 エネルギーの将来を考えましょう(4) ―安全性が確認された原子力発電所は直ちに再稼働をさせるべき―


カテゴリ:  エネルギー    2017-3-14 20:10   閲覧 (1515)


現在、「再生可能エネルギーに頼れば問題が解決する」という無責任な空気が日本全体を覆っています。それだけで「大量の電力を必要とする先進国たる日本の電力需要が全て賄える」という考えには、これまでのシリーズで説明してきたように、大いに異論があります。

再生可能エネルギーに頼る前に、まずは安定した電力を確保することから始めないと、日本の経済は破綻し、国民生活が大きく損なわれる恐れがあります。既に安全性が福島事故以前と比較して飛躍的に高まっている原子力発電所を直ちに再稼働させ、良質な電力需給に不安のない状況を構築してから、じっくりと将来の電源構成に必要な対策を施してゆくのが、今の時代を生きている私達の義務ではないでしょうか。
そのため、まず以下の問題点を検討してみましょう。

1.時間軸が考えられていないこと
2.費用対効果が無視されていること
3.日本の原子力発電所の安全性の向上について十分な説明がなされていないこと
4.海外諸国の原子力開発の状況について十分な説明がなされていないこと
5.一部のマスコミの無責任な報道と放射線教育の欠如が、被曝の影響を過大に恐れさせていること
6.民主党政権時代の誤った除染基準などを修正できないでいること
7.まだ電力不足の決定的な事態が起きていないこと


1.時間軸が考えられていないこと


  多くの原子力発電所は安全対策も施されていつでも再稼働できる準備が整っています。今すぐに30%近くの電力供給を担うことができる状態です。一方、再生可能エネルギーの利用については、太陽光、風力による発電設備は続々と建設されていますが、変動電源であることから技術的に改善すべき課題が残っています。調整用電源が十分に整備されるか、発電された電力を蓄電により安定電源として系統に流すように送電線網が出来るまでは無制限に増やすことはできず、時間のかかる開発作業が必要です。
 調整電源として揚水発電所を建設するとしても適地が限られている上、建設には15年程度の期間が掛かります。 潮流発電なども未来の電源として有望でしょうが、供給側の電源としてある程度の規模となる時期はまだ不明です。 このように、いつ実用化がなされるか分からない技術、発電方式に依存できると考えることが大きな問題です。

2.費用対効果が無視されていること


現在の技術でも、膨大な数の蓄電池を並べ且発電箇所に送電線網が出来れば、太陽光、風力によって発電され電力を蓄えておき、安定電源として系統に流すことは可能です。また、調整用の揚水発電所を建設するには数千億円掛かるのですが、この建設費は事業者が負担し電気代として消費者に転嫁されます。太陽光・風力等不安定電力の調整用の電源を確保するには莫大な費用が掛かるのですが、ここに注目した報道がなされることはほとんどありません。問題を現実的に解決するために限られた資金をいかに有効に使うのか、良く考える必要があります。(図は北海道から本州に送電線を引くのに要する費用の例)


3.日本の原子力発電所の安全性の向上について十分な説明がなされていないこと


  139号では、日本の原子力発電所が飛躍的に安全性を高めていることを説明しました。経産省の資料や原子力規制委員会の資料をよく読めば具体的な改善の内容が理解できますが、政府もマスコミもなぜか国民に向かって分かり易く説明をしようとはしていません。やはり、反原発の空気に水を差す気概を持って、原子力発電所の向上した安全性を積極的に説明をする必要があります。


4.海外諸国の原子力開発の状況について十分な説明がなされていないこと


 日本での事故を受けて稼働を停止した原子力発電所は、海外には無いと言って良いでしょう。それどころか、中国では、現在運転中が31基、建設中が24基あり、これがすべて完成すると日本の54機を抜き去ってしまいます。さらに2030年に2億KWを原子力発電とすることを目標にしていますので、間もなく百基を超える原子炉が稼働することになります。このような状況下で、日本だけが反原発の空気に流されて原子力発電所の再稼働を遅らせていることが如何に無意味か、積極的な説明が必要です。



5.一部のマスコミ報道と放射線教育の欠如が、被曝の影響を過大に恐れさせていること


 放射線は一般的には危険ですが、少量でも被曝したら危険というものではありません。多くの学者、専門家が福島事故の結果原発敷地外に排出された放射線量ではほとんど影響がないと言い切っています。チェルノブイリで起こったような小児の甲状腺がんも見つかっておりません。それにも関わらず、NHKを始め朝日、毎日などの反原発新聞が放射線の影響や福島原発の状況をオドロオドロシク報道してきたために、多くの国民が放射線アレルギーとも言える精神状態に陥っています。きちんと放射線教育がなされていれば、日本中が「放射線コワイ病」に罹ることはなかったと思われますが、義務教育段階で放射線教育をしなかった悪影響が露骨に出てきてしまいました。それが、原発の再稼動が進まない大きな理由となってしまっていますので、状況改善の努力が必要です

6.民主党政権時代の誤った除染基準などを修正できないでいること


  自民党議員も選挙で選ばれますので、「放射線コワイ病」に罹ってしまった選挙民が投票をすると考えると、安易に再稼働を言い出せないというジレンマに陥っています。民主党政権が設定した1mSvという除染目標がいかに馬鹿げた数値であるか分かっていても、マスコミが原発反対50%などと報道すれば、動くことができなくなってしまいます。このような空気が再稼働遅延の大きな原因となっています。


 

7.まだ電力不足の決定的な事態が起きていないこと


反対派は「原発が動いていなくても電力不足は起こっていない」と言っています。これまでに私たちは何回も、化石燃料調達のために年間3兆円もの外貨を吐き出してきたという事実を伝えてきました。また、世界的に非化石化を行わないと地球温暖化によって人類が滅びるかも知れないという危機感を海外の多くの国が共有しています。日本だけが、大停電という事態が起こっていないことを理由に、すぐにでも動かせる原子力発電所を止めておいて、化石燃料を使い続けて良いのでしょうか?炭酸ガスを排出し続けて良いのでしょうか?



終わりに


今一度冷静に全ての条件を勘案して、日本にとってのバランスのとれた電源構成について考えるべき時が来ていると思います。私たちが提案するバランスある電源構成とは、原子力発電を当面排除することなく、再生可能エネルギーを技術的に無理のない程度に導入し、将来も安定したエネルギー・セキュリティーを確保しながら、実現可能性が高い構成比を実現することです。(図参照)


経産省のデータによる震災前10年間の平均電源構成は、化石燃料(LNG+石炭+石油)で62%、再生可能エネルギーが11%(9%が水力)、原子力が27%となっていました。この化石燃料分を水力で10%、バイオマスで9%、その他の再生可能エネルギーで25%、合計44%以上を賄うことを目標値とし、不足する分は当面は火力と原子力で賄なわざるを得ません。これ等目標の実現には長期間を要しますので、今動かせる原子力発電所を直ちに稼働させ、原子力発電所、再生可能エネルギー発電所などの稼働にあわせて、火力発電所を順次閉鎖してゆくという段取りが必要です。最終的には、火力発電所を完全に廃止して、エネルギー消費全体でCO2の排出を80%削減することを目標にするのです。この目標の達成をCOP21が目標としている2050年とするのが合理的であると考えます。
 次号からは、「2050年へのアプローチ」と題して、具体的にいま何が問題で、何をなすべきかをお伝えしたいと思います。



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