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SEJ 日本のエネルギーを考える会

7号  − 福島原発事故の特集(7) −歴史から学べる事 −脱原発ムードに思う−


カテゴリ:  福島事故    2011-7-17 15:30   閲覧 (2420)

1.津波は来る


今、歴史から学ばなかった事を誰よりも後悔しているのは、電力会社、政府、規制当局などの所属を問わず原子力発電に携わって来た関係者の方々だろうと思います。 歴史がきちんと警告を出していたにもかかわらず、それを甘く見て対策を後回しにしてしまった結果、これ程までの大事故にしてしまいました。

津波で多くの方々が亡くなったにも拘らず、放射線を浴びて亡くなった方が居ないのが唯一の救いでしょうか。 歴史から学ばないとひどい仕打ちに会う事を胸に焼き付けて、これからの対策に全力を挙げることが、これ等関係者に与えられた使命なのだろうと考えるのです。

2.技術者の力量
今回の福島原発事故は、事故を起こしたのが巨大な技術の固まりである原子炉であったために、一見技術者集団の犯した大きな過ちの結果に見えますが、本当の原因は技術者の問題というよりは、官僚、政治家、そして経営者の育てて来た、技術的常識を尊重しない風土に由来するように思えます。 この際、技術的英知を最大限利用するために、もう一度全世界の技術者集団を結集して、今回の津波による電源の喪失とその結果としての冷却能力の喪失を教訓として、これ等を防ぐ方策を開発するべきなのではないでしょうか? 福島第一原子力発電所の事故も歴史の一ページに刻まれる事は間違いありません。


この時代に生きた私達は、将来の子供達に悪夢と恐怖の歴史を残すのではなく、大きな困難を克服し、子供達に安全で信頼性の高い原子炉を残すことが歴史を学んだ事の成果となるのではないでしょうか? 原発事故の正式な原因究明は始まったばかりですが、既に今回の事故の原因と思われる事はかなり理解されてきています。 そして、技術的な要件が分かってからの必要な対応技術についての技術者集団の開発力は素晴らしいものがある事は歴史が示しています。 身近な例を挙げれば、1903年にライト兄弟が初めて動力飛行機を飛ばしてから、100年余りで今の航空機やシステムを作り上げて来ました。


これまでに何回も悲惨な事故は有りましたが、その失敗を教訓として、更に安全な飛行機を作り続けて来た航空技術者の人達の努力の賜物である事は異論の無いところだと思います。 「原子炉は怖いからやめてしまおう」という考えは、歴史から何も学んで来なかった人達の発想だと思いたいのです。

3.過ぎたるはなお及ばざるが・・・・


確かに原発事故は広範囲に迷惑を及ぼしています。 その結果として、原発をやめて自然エネルギーに走りたくなるのは良く分かるのですが、今の社会の風潮はあまりに自然エネルギー一色になり過ぎているのではないでしょうか。 自前のエネルギー源である自然エネルギーの有効利用は大いに進めるべきですが、一方解決しなくてはならない問題も山積している訳で、直ちにすべてを自然エネルギーで賄おうとしても無理があります。 技術者の方々の力量は高く評価しておりますので、国民の多くが求めるのであれば、無理なく自然エネルギーを使えるようにしてくれるのだろうと思いますが、色々な限界を認識せずに皆が自然エネルギーに突進してゆくのはどうかと思うのです。 現段階での自然エネルギー利用に関わる問題点をここで取り上げる事はしませんが、今日本が世界の工場として機能し続ける為に必要な電力をどのように確保してゆくのかは、今の世代の私達が真剣に考えて、将来に禍根を残さない結論を出す義務を負っています。 一時的な感情から「脱原発」という耳に快いだけの結論を出してしまって良いのでしょうか? 現状で得られる最もバランスの良い電源構成をまず確立して安定した電力供給を確保する事が先決なのではないでしょうか? 何が何でも自然エネルギーを使おうとしても、今の時点では十分に開発が進んでいません。 どのような電源を使うにしても、それぞれをほどほどに使おうとすべきだというのが、歴史からの教訓ではないでしょうか?



4.流言蜚語



関東大震災の時に、流言飛語があった事は歴史が示しています。 今回の地震とそれに続く津波の被害の後にも、一部で関東大震災の時に有ったようなデマが飛んだようですが、それ以上に深刻な問題だったのは、放射線の影響を過大に話す素人、マスコミ、知識人と称する人達が跋扈した事でした。 ENEOSの千葉工場の火災でも同じことが起こり、「毒物が降って来る」とふれまわった人達が居る事は皆さまもご存知の事と思います。 福島原発の事故の直後に東京で、「子供には帽子をかぶせ、マスクをさせて、雨の日には外に出すな」とふれまわった人達も居ます。 この人達は、聞きかじりの放射線知識をあたかも専門家の様に自信を持って話すため、子供を抱えた人達は簡単にだまされて、無用なパニックに陥ったのでした。 こういう人達は、悪意が無いだけに始末の悪い犯罪者という事になります。
そして、この人達は絶対に責任は取らず、後は知らぬ顔をして、次のデマ飛ばしの機会を楽しみに待っているのでしょう。

5.放射線の脅威


放射線に関わる流言蜚語があっても、義務教育期間中に正しい放射線教育が為されていれば大した問題にはならないのですが、残念ながら日本ではこれまで放射線については殆ど教育らしい教育をして来ませんでした。 目に見えないものですし、出て来る数字が極端に大きい為に、一般の人達はどうしても脅威を感じてしまいます。 今回の福島原発事故と、それに引き続いての報道で、国民全体の放射線についての知識は高まったものと思いますが、基本が教えられていないのでやはりパニックが起こってしまいました。 原爆の後、原発事故の後の放射線の影響は歴史が語っているのですが、これを学んで来られなかった日本国民の不幸を今感じています。 放射線教育の充実を図って、放射線を正しく恐れ、正しく有効利用するべく判断の出来る状況を作り出す時が来たように思います。(E.I記)

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7号  − 福島原発事故の特集(7) −歴史から学べる事 −脱原発ムードに思う−


カテゴリ:  福島事故    2011-7-17 15:30   閲覧 (2420)

1.津波は来る


今、歴史から学ばなかった事を誰よりも後悔しているのは、電力会社、政府、規制当局などの所属を問わず原子力発電に携わって来た関係者の方々だろうと思います。 歴史がきちんと警告を出していたにもかかわらず、それを甘く見て対策を後回しにしてしまった結果、これ程までの大事故にしてしまいました。

津波で多くの方々が亡くなったにも拘らず、放射線を浴びて亡くなった方が居ないのが唯一の救いでしょうか。 歴史から学ばないとひどい仕打ちに会う事を胸に焼き付けて、これからの対策に全力を挙げることが、これ等関係者に与えられた使命なのだろうと考えるのです。

2.技術者の力量
今回の福島原発事故は、事故を起こしたのが巨大な技術の固まりである原子炉であったために、一見技術者集団の犯した大きな過ちの結果に見えますが、本当の原因は技術者の問題というよりは、官僚、政治家、そして経営者の育てて来た、技術的常識を尊重しない風土に由来するように思えます。 この際、技術的英知を最大限利用するために、もう一度全世界の技術者集団を結集して、今回の津波による電源の喪失とその結果としての冷却能力の喪失を教訓として、これ等を防ぐ方策を開発するべきなのではないでしょうか? 福島第一原子力発電所の事故も歴史の一ページに刻まれる事は間違いありません。


この時代に生きた私達は、将来の子供達に悪夢と恐怖の歴史を残すのではなく、大きな困難を克服し、子供達に安全で信頼性の高い原子炉を残すことが歴史を学んだ事の成果となるのではないでしょうか? 原発事故の正式な原因究明は始まったばかりですが、既に今回の事故の原因と思われる事はかなり理解されてきています。 そして、技術的な要件が分かってからの必要な対応技術についての技術者集団の開発力は素晴らしいものがある事は歴史が示しています。 身近な例を挙げれば、1903年にライト兄弟が初めて動力飛行機を飛ばしてから、100年余りで今の航空機やシステムを作り上げて来ました。


これまでに何回も悲惨な事故は有りましたが、その失敗を教訓として、更に安全な飛行機を作り続けて来た航空技術者の人達の努力の賜物である事は異論の無いところだと思います。 「原子炉は怖いからやめてしまおう」という考えは、歴史から何も学んで来なかった人達の発想だと思いたいのです。

3.過ぎたるはなお及ばざるが・・・・


確かに原発事故は広範囲に迷惑を及ぼしています。 その結果として、原発をやめて自然エネルギーに走りたくなるのは良く分かるのですが、今の社会の風潮はあまりに自然エネルギー一色になり過ぎているのではないでしょうか。 自前のエネルギー源である自然エネルギーの有効利用は大いに進めるべきですが、一方解決しなくてはならない問題も山積している訳で、直ちにすべてを自然エネルギーで賄おうとしても無理があります。 技術者の方々の力量は高く評価しておりますので、国民の多くが求めるのであれば、無理なく自然エネルギーを使えるようにしてくれるのだろうと思いますが、色々な限界を認識せずに皆が自然エネルギーに突進してゆくのはどうかと思うのです。 現段階での自然エネルギー利用に関わる問題点をここで取り上げる事はしませんが、今日本が世界の工場として機能し続ける為に必要な電力をどのように確保してゆくのかは、今の世代の私達が真剣に考えて、将来に禍根を残さない結論を出す義務を負っています。 一時的な感情から「脱原発」という耳に快いだけの結論を出してしまって良いのでしょうか? 現状で得られる最もバランスの良い電源構成をまず確立して安定した電力供給を確保する事が先決なのではないでしょうか? 何が何でも自然エネルギーを使おうとしても、今の時点では十分に開発が進んでいません。 どのような電源を使うにしても、それぞれをほどほどに使おうとすべきだというのが、歴史からの教訓ではないでしょうか?



4.流言蜚語



関東大震災の時に、流言飛語があった事は歴史が示しています。 今回の地震とそれに続く津波の被害の後にも、一部で関東大震災の時に有ったようなデマが飛んだようですが、それ以上に深刻な問題だったのは、放射線の影響を過大に話す素人、マスコミ、知識人と称する人達が跋扈した事でした。 ENEOSの千葉工場の火災でも同じことが起こり、「毒物が降って来る」とふれまわった人達が居る事は皆さまもご存知の事と思います。 福島原発の事故の直後に東京で、「子供には帽子をかぶせ、マスクをさせて、雨の日には外に出すな」とふれまわった人達も居ます。 この人達は、聞きかじりの放射線知識をあたかも専門家の様に自信を持って話すため、子供を抱えた人達は簡単にだまされて、無用なパニックに陥ったのでした。 こういう人達は、悪意が無いだけに始末の悪い犯罪者という事になります。
そして、この人達は絶対に責任は取らず、後は知らぬ顔をして、次のデマ飛ばしの機会を楽しみに待っているのでしょう。

5.放射線の脅威


放射線に関わる流言蜚語があっても、義務教育期間中に正しい放射線教育が為されていれば大した問題にはならないのですが、残念ながら日本ではこれまで放射線については殆ど教育らしい教育をして来ませんでした。 目に見えないものですし、出て来る数字が極端に大きい為に、一般の人達はどうしても脅威を感じてしまいます。 今回の福島原発事故と、それに引き続いての報道で、国民全体の放射線についての知識は高まったものと思いますが、基本が教えられていないのでやはりパニックが起こってしまいました。 原爆の後、原発事故の後の放射線の影響は歴史が語っているのですが、これを学んで来られなかった日本国民の不幸を今感じています。 放射線教育の充実を図って、放射線を正しく恐れ、正しく有効利用するべく判断の出来る状況を作り出す時が来たように思います。(E.I記)

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