反原発を謳うメディアは、福島事故以降、原発絡みの問題についてたびたび反原発の主張を繰り返している。なぜ反原発を取り上げているのかを考察してみたい。
世論調査はNHK・民放・全国主要紙が定期的に実施し公開している。原子力について問う世論調査では、反原発を謳うメディアは、原発再稼働や高濃度放射性廃棄物地層処分問題(以降 核のごみと称す)について、国民はそれほど前向きに期待していないかのような印象を与えるよう報じている。
2.反原発を謳うメディアは政府を信頼していない。
ロシアや中国など共産圏諸国のメディアでは現政府教宣機関のような振 舞いが常態化しているのは当然であ る。米国・英国・ドイツなど自由主 義国においては、政府寄りと反政府 の立場でメディアは動いている。
日本も自由主義国の一員であり、メ ディアは左翼系と保守系に概ね区分 され、朝日・毎日・東京は左翼系、 産経・読売は保守系と目されてい る。 主要紙ではないが、『アゴラ2014年1 月』で伊東良平氏「原子力はなぜ嫌わ れるのか」を書いている。《人類が 原子核反応をエネルギー源として実 用化した例は少なく、日本での民生 利用は現在原発のみである。核物質 がテロに悪用される可能性も含めて 国家が管理しなければ民生利用は不 可能である。・・・国家を信頼しな い者は原子力に信頼を置かない。国家こそ人の幸福を脅かす最大の根源である。それは、・・・原発に対する無理解ではなく、原子力というものそのものに対する、一種の信仰である。》とあり、反原発メディアの行動の根拠の神髄を突いている。(図はロイターによる各メディアの信頼度のスコアを示す。
3.国家におけるエネルギー問題の関心度
主要紙を含むメディアはニュースを適宜提供するのが本来の役割であるが、IT化が進んだ現在、新 聞という長文の紙媒体の情報よりも短文の電子媒体を通じて情報を読み取り、瞬時に忘れてしまう。 まして小難しいエネルギー問題は、社説や特集記事を組み取り上げても多くの読者は関心を示さな い。ただ原発事故での帰宅困難地域住民の避難生活の辛さや風評被害等の状況を情緒的に取り上げ、短絡的に不安を煽るような情報や記事には読者は関心を示す。
でも地球温暖化の影響と思われる異常気象を多く体験し、またニュースで知るも、エネルギー問題、特にCO2排出ゼロの原発に繋がるとなると頭は働かない。 2020年9月25日の朝日新聞記事「再生エネ比率急上昇」〈20%超え 政府目標に迫る〉の読者は、どれほど中身を理解し、自分の生活に結び付けたのであろうか。国連事務総長が2020年9月14日、日本 に注文“政府主導で温室効果ガス削減を”と報道されたが、それともどう関連付けたのであろうか。 読者も含めて一般人は、エネルギー問題は専門家や技術者に任せておけばよいと思っているのが普通であり、日常生活では使用する電気がどこでどのように作られているかは関心を示さない。
4.意識の問題
原子力に関心ある者はエネルギー問題を真剣に考えて行動している。それ故に、反原発を謳うメディアに対して[危機感の喪失]・[国家観と価値観の欠如]・[提言せず責任回避]を指摘したくなる。米国カルフォニア州は2035年までにガソリン車の新規製造は禁止すると表明、英国やフランスは2040年までにガソリン・ジーゼル車の販売を中止するという。そのような世界的な状況下で工業立国日本の立ち位置はどうなるのだろうか。地球環境問題やエネルギー問題(電源構成や核のごみ問題)などに対する意識が問われているのだ。
昨今のコロナ禍が世界の隅々に広まり、エネルギー問題への関心や意識が一時期薄れさせている。このような時であるからこそ、日本が置かれている厳しいエネルギー環境に対して正しい危機感を持ち、国家観や価値観を醸成し、責任回避しないことを意識し大局観を持って対応することを忘れてはならない。
おわりに
反原発メディアは政府の施策を批判するのではなく、一般の人々が関心を示さないエネルギー問題に対して、前向きの意見を提言しなければならない。資源小国で少子化と高齢化が進んでいる日本での、核のごみ問題、原子炉40年問題とその延長問題、エネルギー基本計画や規制問題等多くの国内問題が山積している。反原発が正しいと信じているメディアはもっと広く目を開き、日本の将来をより良くするための報道をして欲しい。
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キーワード 原発世論調査 再稼働 放射性廃棄物処分場 国民は前向きでない 印象を与える 反原発メディアは 政府施策の批判なく、前向きの提言すべき
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