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SEJ 日本のエネルギーを考える会

SEJ だより 第9号 第6次エネルギー基本計画に期待すること ―国情に合った電源構成を―


カテゴリ:  エネルギー    2021-2-9 15:30   閲覧 (330)
第6次エネルギー基本計画に期待すること
―国情に合った電源構成を―


菅総理は就任直後の所信表明演説で「2050年にカーボン・ニュートラルを達成する」と宣言した。この宣言は地球温暖化対策と同時に先進国でエネルギーの自給率の最低の日本が対策をすることを意味する。

菅総理は就任直後の所信表明演説で「2050年にカーボン・ニュートラルを達成する」と宣言した。この宣言を実現するためには、現在策定作業が進められている第6次エネルギー基本計画の段階で、この目標を視野に入れた方針が示されなくてはなるまい。この策定作業の中で是非とりあげて貰いたいのが、日本の国情に合った電源開発である。日本では福島原子力事故以降太陽光発電が偏重されているが、その問題点についてはSEJだより第8号で詳述した。今後、デジタル化の進展や輸送部門での電化が更に進み、電力需要が増大することはほぼ確実である。カーボン・ニュートラルを実現し日本に適した電源構成のべスト・ミックスを達成するには、何を海外から学び、日本の知見、技術力と経験をどのように活かしていけば良いのか考えてみた。日本では福島原子力事故以降太陽光発電が偏重されているが、その問題点についてはSEJだより第8号で詳述した。今後、デジタル化の進展や輸送部門での電化が更に進み、電力需要が増大することはほぼ確実である。カーボン・ニュートラルを実現し日本に適した電源構成のべスト・ミックスを達成するには、何を海外から学び、日本の知見、技術力と経験をどのように活かしていけば良いのか考えてみた。

1. 海外での参考事例


● 太陽光発電は有力な脱炭素電源であり、ある程度の規模で導入を図ることは重要であるが、日照による変動が大きい故に主要国のどこを見ても太陽光発電を電力供給の基軸に据えているところは無い。風力・太陽光発電先進国とりわけドイツでは、その電気料金が高止まりしており、家計のコスト圧迫要因となっている。これに加えて、使用されている太陽光パネルの生産がほぼ中国の独占となっており、製造業へのメリットが大幅に減少している。
● 風力発電は、太陽光と比較するとより安定した電源であり、欧州北部である程度活用されている。ただし、その活用のためには安定した風況が期待できる適地が有ることと高い技術力が必要である。
● 北欧各国では、大量に手に入れることが可能な水が有効利用され、水力発電を活用している。ノルウェーでは自国で生産される天然ガスは発電に使わず電力の95%を水力で賄い、天然ガスは輸出に廻してきた。北海油田はほぼ掘りつくされてきてはいるが、それでも世界第3位の天然ガス輸出国となっている。スウェーデンで約45%、フィンランドでも約25%が水力発電によって供給されている。
● 先進国の多くは原子力がやはり必要であると認識し、ある程度の電力を原子力で賄っている。例えばフランスを例にとると、オイル・ショックを経験した結果日本とほぼ同時期に電力を原子力で賄うという方針を採用し、今では70%程を原子力で賄っている。日本が参考にしたがるドイツでも、原子力発電を止めると言いながらも、約10数%は未だに原子力発電で賄っている。また、中国では沿海部の膨大な人口の需要を賄うため、これまでに49基の原子力発電炉を立ち上げ既に世界第3位の原子力大国となっており、今後更に開発を加速させる計画を立てている。
● 日本原子力産業協会によれば、米国では1970〜80年代は、トラブル等により平均設備利用率が50%台と低迷した。しかし、 プラントの改造や検査・保守、燃料交換作業の効率化により、運転実績の改善を 果たし、2017年には92.6%と過去最高を記録している。これにより、発電設備容量は横ばいながらも、発電電力量は増加してきており、発電全体に占める原子力のシェアは約20%を維持している、ということである。このような経緯をたどって来ることが出来た米国の原子力発電事情をみると、規制当局であるNRCの大きな改革により、リスクという物差しを導入した安全規制を行ったことによると理解できる。
2.日本の知見、技術力を活かして実現すべきこと


以上のように海外では脱炭素の為に夫々の国情に合った電源構成を実現していることが参考となる。一方、日本の近年のエネルギー政策を振り返ってみると、民主党政権時代の福島事故の影響を強く受け、原子力発電忌避、太陽光発電偏重が著しく、バランスを欠いた電源構成を助長するような施策に終始してきた。


また、原子力発電を縮小しながら電力需要を賄うため、また増え続ける太陽光発電の過不足分を調整するために、火力発電への依存度が極端に高まっており、一昨年末のCOP25の開催時期に国際環境団体から日本が不名誉な化石賞を受賞したことはまだ記憶に新しい。地球温暖化対策及びエネルギー安全保障の観点からも、今や冷静に日本の置かれている立場を考え、感情論に振り回されないしっかりした電源構成を確立するために、日本の地政学上の立地と持てる技術を有効利用する方策を考えるべき時が来た。



● 既に関係省庁の担当者も認識していると思われるが、太陽光発電への依存が強すぎるとその変動電源としての特徴から、発電を抑制しなくてはならない事態が生ずることはSEJだよりの8号で詳しく説明した。また、大規模に太陽光パネルを設置する適地を得るためには農地、森林などを避けて可住地を利用する必要があり、人口密度が高い日本ではメガ・ソーラーの開発はそろそろ止める時期に差し掛かっていると言えよう。今後は住宅、工場の屋根などに設置して地産地消を図り、緩やかに太陽光発電設備を増やすべきである。太陽光発電の幹線網への送電量が下がれば、需要家の経済的負担も軽減されていくであろう。また、太陽光パネルの生産を中国に独占されることの無いように、日本のメーカの技術力を活かした発電効率の高い先進的な太陽光発電パネルの開発を支援すべきである。
● 更に太陽光を有効利用するためには安価で効率の良い大容量蓄電池の早期開発が欠かせない。既にリチウム・イオン電池が$150/kWhの水準まで価格が下がっているとの情報もあるが、大量生産の体制を整えて更なる価格低減を実現すべきである。


● 日本は急峻な山が多くきれいな水に恵まれているという水力発電に適した地形となっている。既に水力発電用ダムの開発可能なところはほぼ利用し尽くされているとの説もあるが、太陽光発電の余剰分を活用する揚水発電のための再開発や中小を含む色々な規模の発電所の開発は高い可能性を秘めていると考えられる。幸い、1950年代から1980年頃まで、電源開発(株)をはじめ全ての電力会社が揚水発電所を含む大規模水力発電所の建設、運転の経験を蓄積しており、これからもその知見を活かして多様な発電所の更なる開発を担当していくべきである。
● また、日本は海に囲まれており、4つの大きな海流が膨大なエネルギーを抱えて日本近海を流れている。このエネルギーを取り出す海流発電は、一般財団法人エンジニアリング振興協会や東京大学などが、IHI、三菱重工などの機器メーカと組んで実用化研究を行っている。この開発努力を支援して早期実現を図ることも考えて貰いたい。


3.エネルギー基本計画策定において、今議論すべきこと
以上述べてきたように、世界各国はそれぞれ自国の状況にあった電源構成を実現してきている。日本は、ドイツなど一部の国の取り組みをひたすらに模倣するのではなく、日本に合った電源構成を念頭に今次のエネルギー基本計画の策定において、我が国の強みが発揮できるような方針が示されることを期待したい。再生可能エネルギーだけで2050年のカーボン・ニュートラルの実現は極めて困難であり、原子力発電を併用することは当然であると考えるべきである。
現在行われている第6次エネルギー基本計画の策定作業は一部原子力懐疑派の意見が出てはいるものの、概ね望ましい方向での議論が進んでいるように見える。しかしながら、懸念されるのは、現在の化石燃料の大量使用により足元に火がついているにも拘らず当面のエネルギー消費構造を抜本的に改める議論が大してなされず、将来の技術開発に大きな期待をかけて議論が進んでしまうことである。
福島事故の経験を踏まえて原子力の安全規制の見直しを行い、安全性向上が進められていることは評価できるが、再稼働に至るには長期間を要することが問題になっている。
多くの原子力発電所がすぐにでも稼働が可能な状態であるのに待機状態になっており、我が国が保有する高額の資産が有効利用されない状況となっている。第6次エネルギー基本計画に期待すること
―国情に合った電源構成を―


菅総理は就任直後の所信表明演説で「2050年にカーボン・ニュートラルを達成する」と宣言した。この宣言は地球温暖化対策と同時に先進国でエネルギーの自給率の最低の日本が対策をすることを意味する。菅総理は就任直後の所信表明演説で「2050年にカーボン・ニュートラルを達成する」と宣言した。この宣言を実現するためには、現在策定作業が進められている第6次エネルギー基本計画の段階で、この目標を視野に入れた方針が示されなくてはなるまい。この策定作業の中で是非とりあげて貰いたいのが、日本の国情に合った電源開発である。日本では福島原子力事故以降太陽光発電が偏重されているが、その問題点についてはSEJだより第8号で詳述した。今後、デジタル化の進展や輸送部門での電化が更に進み、電力需要が増大することはほぼ確実である。カーボン・ニュートラルを実現し日本に適した電源構成のべスト・ミックスを達成するには、何を海外から学び、日本の知見、技術力と経験をどのように活かしていけば良いのか考えてみた。日本では福島原子力事故以降太陽光発電が偏重されているが、その問題点についてはSEJだより第8号で詳述した。今後、デジタル化の進展や輸送部門での電化が更に進み、電力需要が増大することはほぼ確実である。カーボン・ニュートラルを実現し日本に適した電源構成のべスト・ミックスを達成するには、何を海外から学び、日本の知見、技術力と経験をどのように活かしていけば良いのか考えてみた。

1. 海外での参考事例


● 太陽光発電は有力な脱炭素電源であり、ある程度の規模で導入を図ることは重要であるが、日照による変動が大きい故に主要国のどこを見ても太陽光発電を電力供給の基軸に据えているところは無い。風力・太陽光発電先進国とりわけドイツでは、その電気料金が高止まりしており、家計のコスト圧迫要因となっている。これに加えて、使用されている太陽光パネルの生産がほぼ中国の独占となっており、製造業へのメリットが大幅に減少している。
● 風力発電は、太陽光と比較するとより安定した電源であり、欧州北部である程度活用されている。ただし、その活用のためには安定した風況が期待できる適地が有ることと高い技術力が必要である。
● 北欧各国では、大量に手に入れることが可能な水が有効利用され、水力発電を活用している。ノルウェーでは自国で生産される天然ガスは発電に使わず電力の95%を水力で賄い、天然ガスは輸出に廻してきた。北海油田はほぼ掘りつくされてきてはいるが、それでも世界第3位の天然ガス輸出国となっている。スウェーデンで約45%、フィンランドでも約25%が水力発電によって供給されている。
● 先進国の多くは原子力がやはり必要であると認識し、ある程度の電力を原子力で賄っている。例えばフランスを例にとると、オイル・ショックを経験した結果日本とほぼ同時期に電力を原子力で賄うという方針を採用し、今では70%程を原子力で賄っている。日本が参考にしたがるドイツでも、原子力発電を止めると言いながらも、約10数%は未だに原子力発電で賄っている。また、中国では沿海部の膨大な人口の需要を賄うため、これまでに49基の原子力発電炉を立ち上げ既に世界第3位の原子力大国となっており、今後更に開発を加速させる計画を立てている。
● 日本原子力産業協会によれば、米国では1970〜80年代は、トラブル等により平均設備利用率が50%台と低迷した。しかし、 プラントの改造や検査・保守、燃料交換作業の効率化により、運転実績の改善を 果たし、2017年には92.6%と過去最高を記録している。これにより、発電設備容量は横ばいながらも、発電電力量は増加してきており、発電全体に占める原子力のシェアは約20%を維持している、ということである。このような経緯をたどって来ることが出来た米国の原子力発電事情をみると、規制当局であるNRCの大きな改革により、リスクという物差しを導入した安全規制を行ったことによると理解できる。
2.日本の知見、技術力を活かして実現すべきこと


以上のように海外では脱炭素の為に夫々の国情に合った電源構成を実現していることが参考となる。一方、日本の近年のエネルギー政策を振り返ってみると、民主党政権時代の福島事故の影響を強く受け、原子力発電忌避、太陽光発電偏重が著しく、バランスを欠いた電源構成を助長するような施策に終始してきた。


また、原子力発電を縮小しながら電力需要を賄うため、また増え続ける太陽光発電の過不足分を調整するために、火力発電への依存度が極端に高まっており、一昨年末のCOP25の開催時期に国際環境団体から日本が不名誉な化石賞を受賞したことはまだ記憶に新しい。地球温暖化対策及びエネルギー安全保障の観点からも、今や冷静に日本の置かれている立場を考え、感情論に振り回されないしっかりした電源構成を確立するために、日本の地政学上の立地と持てる技術を有効利用する方策を考えるべき時が来た。



● 既に関係省庁の担当者も認識していると思われるが、太陽光発電への依存が強すぎるとその変動電源としての特徴から、発電を抑制しなくてはならない事態が生ずることはSEJだよりの8号で詳しく説明した。また、大規模に太陽光パネルを設置する適地を得るためには農地、森林などを避けて可住地を利用する必要があり、人口密度が高い日本ではメガ・ソーラーの開発はそろそろ止める時期に差し掛かっていると言えよう。今後は住宅、工場の屋根などに設置して地産地消を図り、緩やかに太陽光発電設備を増やすべきである。太陽光発電の幹線網への送電量が下がれば、需要家の経済的負担も軽減されていくであろう。また、太陽光パネルの生産を中国に独占されることの無いように、日本のメーカの技術力を活かした発電効率の高い先進的な太陽光発電パネルの開発を支援すべきである。
● 更に太陽光を有効利用するためには安価で効率の良い大容量蓄電池の早期開発が欠かせない。既にリチウム・イオン電池が$150/kWhの水準まで価格が下がっているとの情報もあるが、大量生産の体制を整えて更なる価格低減を実現すべきである。


● 日本は急峻な山が多くきれいな水に恵まれているという水力発電に適した地形となっている。既に水力発電用ダムの開発可能なところはほぼ利用し尽くされているとの説もあるが、太陽光発電の余剰分を活用する揚水発電のための再開発や中小を含む色々な規模の発電所の開発は高い可能性を秘めていると考えられる。幸い、1950年代から1980年頃まで、電源開発(株)をはじめ全ての電力会社が揚水発電所を含む大規模水力発電所の建設、運転の経験を蓄積しており、これからもその知見を活かして多様な発電所の更なる開発を担当していくべきである。
● また、日本は海に囲まれており、4つの大きな海流が膨大なエネルギーを抱えて日本近海を流れている。このエネルギーを取り出す海流発電は、一般財団法人エンジニアリング振興協会や東京大学などが、IHI、三菱重工などの機器メーカと組んで実用化研究を行っている。この開発努力を支援して早期実現を図ることも考えて貰いたい。


3.エネルギー基本計画策定において、今議論すべきこと
以上述べてきたように、世界各国はそれぞれ自国の状況にあった電源構成を実現してきている。日本は、ドイツなど一部の国の取り組みをひたすらに模倣するのではなく、日本に合った電源構成を念頭に今次のエネルギー基本計画の策定において、我が国の強みが発揮できるような方針が示されることを期待したい。第6次エネルギー基本計画に期待すること
―国情に合った電源構成を―


菅総理は就任直後の所信表明演説で「2050年にカーボン・ニュートラルを達成する」と宣言した。この宣言は地球温暖化対策と同時に先進国でエネルギーの自給率の最低の日本が対策をすることを意味する。菅総理は就任直後の所信表明演説で「2050年にカーボン・ニュートラルを達成する」と宣言した。この宣言を実現するためには、現在策定作業が進められている第6次エネルギー基本計画の段階で、この目標を視野に入れた方針が示されなくてはなるまい。この策定作業の中で是非とりあげて貰いたいのが、日本の国情に合った電源開発である。日本では福島原子力事故以降太陽光発電が偏重されているが、その問題点についてはSEJだより第8号で詳述した。今後、デジタル化の進展や輸送部門での電化が更に進み、電力需要が増大することはほぼ確実である。カーボン・ニュートラルを実現し日本に適した電源構成のべスト・ミックスを達成するには、何を海外から学び、日本の知見、技術力と経験をどのように活かしていけば良いのか考えてみた。日本では福島原子力事故以降太陽光発電が偏重されているが、その問題点についてはSEJだより第8号で詳述した。今後、デジタル化の進展や輸送部門での電化が更に進み、電力需要が増大することはほぼ確実である。カーボン・ニュートラルを実現し日本に適した電源構成のべスト・ミックスを達成するには、何を海外から学び、日本の知見、技術力と経験をどのように活かしていけば良いのか考えてみた。

1. 海外での参考事例


● 太陽光発電は有力な脱炭素電源であり、ある程度の規模で導入を図ることは重要であるが、日照による変動が大きい故に主要国のどこを見ても太陽光発電を電力供給の基軸に据えているところは無い。風力・太陽光発電先進国とりわけドイツでは、その電気料金が高止まりしており、家計のコスト圧迫要因となっている。これに加えて、使用されている太陽光パネルの生産がほぼ中国の独占となっており、製造業へのメリットが大幅に減少している。
● 風力発電は、太陽光と比較するとより安定した電源であり、欧州北部である程度活用されている。ただし、その活用のためには安定した風況が期待できる適地が有ることと高い技術力が必要である。
● 北欧各国では、大量に手に入れることが可能な水が有効利用され、水力発電を活用している。ノルウェーでは自国で生産される天然ガスは発電に使わず電力の95%を水力で賄い、天然ガスは輸出に廻してきた。北海油田はほぼ掘りつくされてきてはいるが、それでも世界第3位の天然ガス輸出国となっている。スウェーデンで約45%、フィンランドでも約25%が水力発電によって供給されている。
● 先進国の多くは原子力がやはり必要であると認識し、ある程度の電力を原子力で賄っている。例えばフランスを例にとると、オイル・ショックを経験した結果日本とほぼ同時期に電力を原子力で賄うという方針を採用し、今では70%程を原子力で賄っている。日本が参考にしたがるドイツでも、原子力発電を止めると言いながらも、約10数%は未だに原子力発電で賄っている。また、中国では沿海部の膨大な人口の需要を賄うため、これまでに49基の原子力発電炉を立ち上げ既に世界第3位の原子力大国となっており、今後更に開発を加速させる計画を立てている。
● 日本原子力産業協会によれば、米国では1970〜80年代は、トラブル等により平均設備利用率が50%台と低迷した。しかし、 プラントの改造や検査・保守、燃料交換作業の効率化により、運転実績の改善を 果たし、2017年には92.6%と過去最高を記録している。これにより、発電設備容量は横ばいながらも、発電電力量は増加してきており、発電全体に占める原子力のシェアは約20%を維持している、ということである。このような経緯をたどって来ることが出来た米国の原子力発電事情をみると、規制当局であるNRCの大きな改革により、リスクという物差しを導入した安全規制を行ったことによると理解できる。
2.日本の知見、技術力を活かして実現すべきこと


以上のように海外では脱炭素の為に夫々の国情に合った電源構成を実現していることが参考となる。一方、日本の近年のエネルギー政策を振り返ってみると、民主党政権時代の福島事故の影響を強く受け、原子力発電忌避、太陽光発電偏重が著しく、バランスを欠いた電源構成を助長するような施策に終始してきた。


また、原子力発電を縮小しながら電力需要を賄うため、また増え続ける太陽光発電の過不足分を調整するために、火力発電への依存度が極端に高まっており、一昨年末のCOP25の開催時期に国際環境団体から日本が不名誉な化石賞を受賞したことはまだ記憶に新しい。地球温暖化対策及びエネルギー安全保障の観点からも、今や冷静に日本の置かれている立場を考え、感情論に振り回されないしっかりした電源構成を確立するために、日本の地政学上の立地と持てる技術を有効利用する方策を考えるべき時が来た。



● 既に関係省庁の担当者も認識していると思われるが、太陽光発電への依存が強すぎるとその変動電源としての特徴から、発電を抑制しなくてはならない事態が生ずることはSEJだよりの8号で詳しく説明した。また、大規模に太陽光パネルを設置する適地を得るためには農地、森林などを避けて可住地を利用する必要があり、人口密度が高い日本ではメガ・ソーラーの開発はそろそろ止める時期に差し掛かっていると言えよう。今後は住宅、工場の屋根などに設置して地産地消を図り、緩やかに太陽光発電設備を増やすべきである。太陽光発電の幹線網への送電量が下がれば、需要家の経済的負担も軽減されていくであろう。また、太陽光パネルの生産を中国に独占されることの無いように、日本のメーカの技術力を活かした発電効率の高い先進的な太陽光発電パネルの開発を支援すべきである。
● 更に太陽光を有効利用するためには安価で効率の良い大容量蓄電池の早期開発が欠かせない。既にリチウム・イオン電池が$150/kWhの水準まで価格が下がっているとの情報もあるが、大量生産の体制を整えて更なる価格低減を実現すべきである。


● 日本は急峻な山が多くきれいな水に恵まれているという水力発電に適した地形となっている。既に水力発電用ダムの開発可能なところはほぼ利用し尽くされているとの説もあるが、太陽光発電の余剰分を活用する揚水発電のための再開発や中小を含む色々な規模の発電所の開発は高い可能性を秘めていると考えられる。幸い、1950年代から1980年頃まで、電源開発(株)をはじめ全ての電力会社が揚水発電所を含む大規模水力発電所の建設、運転の経験を蓄積しており、これからもその知見を活かして多様な発電所の更なる開発を担当していくべきである。
● また、日本は海に囲まれており、4つの大きな海流が膨大なエネルギーを抱えて日本近海を流れている。このエネルギーを取り出す海流発電は、一般財団法人エンジニアリング振興協会や東京大学などが、IHI、三菱重工などの機器メーカと組んで実用化研究を行っている。この開発努力を支援して早期実現を図ることも考えて貰いたい。


3.エネルギー基本計画策定において、今議論すべきこと
以上述べてきたように、世界各国はそれぞれ自国の状況にあった電源構成を実現してきている。日本は、ドイツなど一部の国の取り組みをひたすらに模倣するのではなく、日本に合った電源構成を念頭に今次のエネルギー基本計画の策定において、我が国の強みが発揮できるような方針が示されることを期待したい。再生可能エネルギーだけで2050年のカーボン・ニュートラルの実現は極めて困難であり、原子力発電を併用することは当然であると考えるべきである。
現在行われている第6次エネルギー基本計画の策定作業は一部原子力懐疑派の意見が出てはいるものの、概ね望ましい方向での議論が進んでいるように見える。しかしながら、懸念されるのは、現在の化石燃料の大量使用により足元に火がついているにも拘らず当面のエネルギー消費構造を抜本的に改める議論が大してなされず、将来の技術開発に大きな期待をかけて議論が進んでしまうことである。
福島事故の経験を踏まえて原子力の安全規制の見直しを行い、安全性向上が進められていることは評価できるが、再稼働に至るには長期間を要することが問題になっている。
多くの原子力発電所がすぐにでも稼働が可能な状態であるのに待機状態になっており、我が国が保有する高額の資産が有効利用されない状況となっている。
◉まずは、原子力発電所の再稼働を急ぐことにより、当面の電力供給に不安が無い状態を作ることが先決であり,その後に2030年、2050年を見据えて、我が国の技術力を活かした最良であると考えられる電源構成を実現すべく議論を進めて欲しいものである。
●近未来の電力需要を賄う上で必須である原子力発電所の新増設も、日本の技術者、技術力の維持のためにも避けて通るべきではなく、客観的で冷静な議論を期待したい。更に、最近顕在化している新電力の価格問題、供給予備率の逼迫問題などを解決する重要な手段として原子力が果たす役割も正当な議論がなされることを望むものである。

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SEJ だより 第9号 第6次エネルギー基本計画に期待すること ―国情に合った電源構成を―


カテゴリ:  エネルギー    2021-2-9 15:30   閲覧 (330)
第6次エネルギー基本計画に期待すること
―国情に合った電源構成を―


菅総理は就任直後の所信表明演説で「2050年にカーボン・ニュートラルを達成する」と宣言した。この宣言は地球温暖化対策と同時に先進国でエネルギーの自給率の最低の日本が対策をすることを意味する。

菅総理は就任直後の所信表明演説で「2050年にカーボン・ニュートラルを達成する」と宣言した。この宣言を実現するためには、現在策定作業が進められている第6次エネルギー基本計画の段階で、この目標を視野に入れた方針が示されなくてはなるまい。この策定作業の中で是非とりあげて貰いたいのが、日本の国情に合った電源開発である。日本では福島原子力事故以降太陽光発電が偏重されているが、その問題点についてはSEJだより第8号で詳述した。今後、デジタル化の進展や輸送部門での電化が更に進み、電力需要が増大することはほぼ確実である。カーボン・ニュートラルを実現し日本に適した電源構成のべスト・ミックスを達成するには、何を海外から学び、日本の知見、技術力と経験をどのように活かしていけば良いのか考えてみた。日本では福島原子力事故以降太陽光発電が偏重されているが、その問題点についてはSEJだより第8号で詳述した。今後、デジタル化の進展や輸送部門での電化が更に進み、電力需要が増大することはほぼ確実である。カーボン・ニュートラルを実現し日本に適した電源構成のべスト・ミックスを達成するには、何を海外から学び、日本の知見、技術力と経験をどのように活かしていけば良いのか考えてみた。

1. 海外での参考事例


● 太陽光発電は有力な脱炭素電源であり、ある程度の規模で導入を図ることは重要であるが、日照による変動が大きい故に主要国のどこを見ても太陽光発電を電力供給の基軸に据えているところは無い。風力・太陽光発電先進国とりわけドイツでは、その電気料金が高止まりしており、家計のコスト圧迫要因となっている。これに加えて、使用されている太陽光パネルの生産がほぼ中国の独占となっており、製造業へのメリットが大幅に減少している。
● 風力発電は、太陽光と比較するとより安定した電源であり、欧州北部である程度活用されている。ただし、その活用のためには安定した風況が期待できる適地が有ることと高い技術力が必要である。
● 北欧各国では、大量に手に入れることが可能な水が有効利用され、水力発電を活用している。ノルウェーでは自国で生産される天然ガスは発電に使わず電力の95%を水力で賄い、天然ガスは輸出に廻してきた。北海油田はほぼ掘りつくされてきてはいるが、それでも世界第3位の天然ガス輸出国となっている。スウェーデンで約45%、フィンランドでも約25%が水力発電によって供給されている。
● 先進国の多くは原子力がやはり必要であると認識し、ある程度の電力を原子力で賄っている。例えばフランスを例にとると、オイル・ショックを経験した結果日本とほぼ同時期に電力を原子力で賄うという方針を採用し、今では70%程を原子力で賄っている。日本が参考にしたがるドイツでも、原子力発電を止めると言いながらも、約10数%は未だに原子力発電で賄っている。また、中国では沿海部の膨大な人口の需要を賄うため、これまでに49基の原子力発電炉を立ち上げ既に世界第3位の原子力大国となっており、今後更に開発を加速させる計画を立てている。
● 日本原子力産業協会によれば、米国では1970〜80年代は、トラブル等により平均設備利用率が50%台と低迷した。しかし、 プラントの改造や検査・保守、燃料交換作業の効率化により、運転実績の改善を 果たし、2017年には92.6%と過去最高を記録している。これにより、発電設備容量は横ばいながらも、発電電力量は増加してきており、発電全体に占める原子力のシェアは約20%を維持している、ということである。このような経緯をたどって来ることが出来た米国の原子力発電事情をみると、規制当局であるNRCの大きな改革により、リスクという物差しを導入した安全規制を行ったことによると理解できる。
2.日本の知見、技術力を活かして実現すべきこと


以上のように海外では脱炭素の為に夫々の国情に合った電源構成を実現していることが参考となる。一方、日本の近年のエネルギー政策を振り返ってみると、民主党政権時代の福島事故の影響を強く受け、原子力発電忌避、太陽光発電偏重が著しく、バランスを欠いた電源構成を助長するような施策に終始してきた。


また、原子力発電を縮小しながら電力需要を賄うため、また増え続ける太陽光発電の過不足分を調整するために、火力発電への依存度が極端に高まっており、一昨年末のCOP25の開催時期に国際環境団体から日本が不名誉な化石賞を受賞したことはまだ記憶に新しい。地球温暖化対策及びエネルギー安全保障の観点からも、今や冷静に日本の置かれている立場を考え、感情論に振り回されないしっかりした電源構成を確立するために、日本の地政学上の立地と持てる技術を有効利用する方策を考えるべき時が来た。



● 既に関係省庁の担当者も認識していると思われるが、太陽光発電への依存が強すぎるとその変動電源としての特徴から、発電を抑制しなくてはならない事態が生ずることはSEJだよりの8号で詳しく説明した。また、大規模に太陽光パネルを設置する適地を得るためには農地、森林などを避けて可住地を利用する必要があり、人口密度が高い日本ではメガ・ソーラーの開発はそろそろ止める時期に差し掛かっていると言えよう。今後は住宅、工場の屋根などに設置して地産地消を図り、緩やかに太陽光発電設備を増やすべきである。太陽光発電の幹線網への送電量が下がれば、需要家の経済的負担も軽減されていくであろう。また、太陽光パネルの生産を中国に独占されることの無いように、日本のメーカの技術力を活かした発電効率の高い先進的な太陽光発電パネルの開発を支援すべきである。
● 更に太陽光を有効利用するためには安価で効率の良い大容量蓄電池の早期開発が欠かせない。既にリチウム・イオン電池が$150/kWhの水準まで価格が下がっているとの情報もあるが、大量生産の体制を整えて更なる価格低減を実現すべきである。


● 日本は急峻な山が多くきれいな水に恵まれているという水力発電に適した地形となっている。既に水力発電用ダムの開発可能なところはほぼ利用し尽くされているとの説もあるが、太陽光発電の余剰分を活用する揚水発電のための再開発や中小を含む色々な規模の発電所の開発は高い可能性を秘めていると考えられる。幸い、1950年代から1980年頃まで、電源開発(株)をはじめ全ての電力会社が揚水発電所を含む大規模水力発電所の建設、運転の経験を蓄積しており、これからもその知見を活かして多様な発電所の更なる開発を担当していくべきである。
● また、日本は海に囲まれており、4つの大きな海流が膨大なエネルギーを抱えて日本近海を流れている。このエネルギーを取り出す海流発電は、一般財団法人エンジニアリング振興協会や東京大学などが、IHI、三菱重工などの機器メーカと組んで実用化研究を行っている。この開発努力を支援して早期実現を図ることも考えて貰いたい。


3.エネルギー基本計画策定において、今議論すべきこと
以上述べてきたように、世界各国はそれぞれ自国の状況にあった電源構成を実現してきている。日本は、ドイツなど一部の国の取り組みをひたすらに模倣するのではなく、日本に合った電源構成を念頭に今次のエネルギー基本計画の策定において、我が国の強みが発揮できるような方針が示されることを期待したい。再生可能エネルギーだけで2050年のカーボン・ニュートラルの実現は極めて困難であり、原子力発電を併用することは当然であると考えるべきである。
現在行われている第6次エネルギー基本計画の策定作業は一部原子力懐疑派の意見が出てはいるものの、概ね望ましい方向での議論が進んでいるように見える。しかしながら、懸念されるのは、現在の化石燃料の大量使用により足元に火がついているにも拘らず当面のエネルギー消費構造を抜本的に改める議論が大してなされず、将来の技術開発に大きな期待をかけて議論が進んでしまうことである。
福島事故の経験を踏まえて原子力の安全規制の見直しを行い、安全性向上が進められていることは評価できるが、再稼働に至るには長期間を要することが問題になっている。
多くの原子力発電所がすぐにでも稼働が可能な状態であるのに待機状態になっており、我が国が保有する高額の資産が有効利用されない状況となっている。第6次エネルギー基本計画に期待すること
―国情に合った電源構成を―


菅総理は就任直後の所信表明演説で「2050年にカーボン・ニュートラルを達成する」と宣言した。この宣言は地球温暖化対策と同時に先進国でエネルギーの自給率の最低の日本が対策をすることを意味する。菅総理は就任直後の所信表明演説で「2050年にカーボン・ニュートラルを達成する」と宣言した。この宣言を実現するためには、現在策定作業が進められている第6次エネルギー基本計画の段階で、この目標を視野に入れた方針が示されなくてはなるまい。この策定作業の中で是非とりあげて貰いたいのが、日本の国情に合った電源開発である。日本では福島原子力事故以降太陽光発電が偏重されているが、その問題点についてはSEJだより第8号で詳述した。今後、デジタル化の進展や輸送部門での電化が更に進み、電力需要が増大することはほぼ確実である。カーボン・ニュートラルを実現し日本に適した電源構成のべスト・ミックスを達成するには、何を海外から学び、日本の知見、技術力と経験をどのように活かしていけば良いのか考えてみた。日本では福島原子力事故以降太陽光発電が偏重されているが、その問題点についてはSEJだより第8号で詳述した。今後、デジタル化の進展や輸送部門での電化が更に進み、電力需要が増大することはほぼ確実である。カーボン・ニュートラルを実現し日本に適した電源構成のべスト・ミックスを達成するには、何を海外から学び、日本の知見、技術力と経験をどのように活かしていけば良いのか考えてみた。

1. 海外での参考事例


● 太陽光発電は有力な脱炭素電源であり、ある程度の規模で導入を図ることは重要であるが、日照による変動が大きい故に主要国のどこを見ても太陽光発電を電力供給の基軸に据えているところは無い。風力・太陽光発電先進国とりわけドイツでは、その電気料金が高止まりしており、家計のコスト圧迫要因となっている。これに加えて、使用されている太陽光パネルの生産がほぼ中国の独占となっており、製造業へのメリットが大幅に減少している。
● 風力発電は、太陽光と比較するとより安定した電源であり、欧州北部である程度活用されている。ただし、その活用のためには安定した風況が期待できる適地が有ることと高い技術力が必要である。
● 北欧各国では、大量に手に入れることが可能な水が有効利用され、水力発電を活用している。ノルウェーでは自国で生産される天然ガスは発電に使わず電力の95%を水力で賄い、天然ガスは輸出に廻してきた。北海油田はほぼ掘りつくされてきてはいるが、それでも世界第3位の天然ガス輸出国となっている。スウェーデンで約45%、フィンランドでも約25%が水力発電によって供給されている。
● 先進国の多くは原子力がやはり必要であると認識し、ある程度の電力を原子力で賄っている。例えばフランスを例にとると、オイル・ショックを経験した結果日本とほぼ同時期に電力を原子力で賄うという方針を採用し、今では70%程を原子力で賄っている。日本が参考にしたがるドイツでも、原子力発電を止めると言いながらも、約10数%は未だに原子力発電で賄っている。また、中国では沿海部の膨大な人口の需要を賄うため、これまでに49基の原子力発電炉を立ち上げ既に世界第3位の原子力大国となっており、今後更に開発を加速させる計画を立てている。
● 日本原子力産業協会によれば、米国では1970〜80年代は、トラブル等により平均設備利用率が50%台と低迷した。しかし、 プラントの改造や検査・保守、燃料交換作業の効率化により、運転実績の改善を 果たし、2017年には92.6%と過去最高を記録している。これにより、発電設備容量は横ばいながらも、発電電力量は増加してきており、発電全体に占める原子力のシェアは約20%を維持している、ということである。このような経緯をたどって来ることが出来た米国の原子力発電事情をみると、規制当局であるNRCの大きな改革により、リスクという物差しを導入した安全規制を行ったことによると理解できる。
2.日本の知見、技術力を活かして実現すべきこと


以上のように海外では脱炭素の為に夫々の国情に合った電源構成を実現していることが参考となる。一方、日本の近年のエネルギー政策を振り返ってみると、民主党政権時代の福島事故の影響を強く受け、原子力発電忌避、太陽光発電偏重が著しく、バランスを欠いた電源構成を助長するような施策に終始してきた。


また、原子力発電を縮小しながら電力需要を賄うため、また増え続ける太陽光発電の過不足分を調整するために、火力発電への依存度が極端に高まっており、一昨年末のCOP25の開催時期に国際環境団体から日本が不名誉な化石賞を受賞したことはまだ記憶に新しい。地球温暖化対策及びエネルギー安全保障の観点からも、今や冷静に日本の置かれている立場を考え、感情論に振り回されないしっかりした電源構成を確立するために、日本の地政学上の立地と持てる技術を有効利用する方策を考えるべき時が来た。



● 既に関係省庁の担当者も認識していると思われるが、太陽光発電への依存が強すぎるとその変動電源としての特徴から、発電を抑制しなくてはならない事態が生ずることはSEJだよりの8号で詳しく説明した。また、大規模に太陽光パネルを設置する適地を得るためには農地、森林などを避けて可住地を利用する必要があり、人口密度が高い日本ではメガ・ソーラーの開発はそろそろ止める時期に差し掛かっていると言えよう。今後は住宅、工場の屋根などに設置して地産地消を図り、緩やかに太陽光発電設備を増やすべきである。太陽光発電の幹線網への送電量が下がれば、需要家の経済的負担も軽減されていくであろう。また、太陽光パネルの生産を中国に独占されることの無いように、日本のメーカの技術力を活かした発電効率の高い先進的な太陽光発電パネルの開発を支援すべきである。
● 更に太陽光を有効利用するためには安価で効率の良い大容量蓄電池の早期開発が欠かせない。既にリチウム・イオン電池が$150/kWhの水準まで価格が下がっているとの情報もあるが、大量生産の体制を整えて更なる価格低減を実現すべきである。


● 日本は急峻な山が多くきれいな水に恵まれているという水力発電に適した地形となっている。既に水力発電用ダムの開発可能なところはほぼ利用し尽くされているとの説もあるが、太陽光発電の余剰分を活用する揚水発電のための再開発や中小を含む色々な規模の発電所の開発は高い可能性を秘めていると考えられる。幸い、1950年代から1980年頃まで、電源開発(株)をはじめ全ての電力会社が揚水発電所を含む大規模水力発電所の建設、運転の経験を蓄積しており、これからもその知見を活かして多様な発電所の更なる開発を担当していくべきである。
● また、日本は海に囲まれており、4つの大きな海流が膨大なエネルギーを抱えて日本近海を流れている。このエネルギーを取り出す海流発電は、一般財団法人エンジニアリング振興協会や東京大学などが、IHI、三菱重工などの機器メーカと組んで実用化研究を行っている。この開発努力を支援して早期実現を図ることも考えて貰いたい。


3.エネルギー基本計画策定において、今議論すべきこと
以上述べてきたように、世界各国はそれぞれ自国の状況にあった電源構成を実現してきている。日本は、ドイツなど一部の国の取り組みをひたすらに模倣するのではなく、日本に合った電源構成を念頭に今次のエネルギー基本計画の策定において、我が国の強みが発揮できるような方針が示されることを期待したい。第6次エネルギー基本計画に期待すること
―国情に合った電源構成を―


菅総理は就任直後の所信表明演説で「2050年にカーボン・ニュートラルを達成する」と宣言した。この宣言は地球温暖化対策と同時に先進国でエネルギーの自給率の最低の日本が対策をすることを意味する。菅総理は就任直後の所信表明演説で「2050年にカーボン・ニュートラルを達成する」と宣言した。この宣言を実現するためには、現在策定作業が進められている第6次エネルギー基本計画の段階で、この目標を視野に入れた方針が示されなくてはなるまい。この策定作業の中で是非とりあげて貰いたいのが、日本の国情に合った電源開発である。日本では福島原子力事故以降太陽光発電が偏重されているが、その問題点についてはSEJだより第8号で詳述した。今後、デジタル化の進展や輸送部門での電化が更に進み、電力需要が増大することはほぼ確実である。カーボン・ニュートラルを実現し日本に適した電源構成のべスト・ミックスを達成するには、何を海外から学び、日本の知見、技術力と経験をどのように活かしていけば良いのか考えてみた。日本では福島原子力事故以降太陽光発電が偏重されているが、その問題点についてはSEJだより第8号で詳述した。今後、デジタル化の進展や輸送部門での電化が更に進み、電力需要が増大することはほぼ確実である。カーボン・ニュートラルを実現し日本に適した電源構成のべスト・ミックスを達成するには、何を海外から学び、日本の知見、技術力と経験をどのように活かしていけば良いのか考えてみた。

1. 海外での参考事例


● 太陽光発電は有力な脱炭素電源であり、ある程度の規模で導入を図ることは重要であるが、日照による変動が大きい故に主要国のどこを見ても太陽光発電を電力供給の基軸に据えているところは無い。風力・太陽光発電先進国とりわけドイツでは、その電気料金が高止まりしており、家計のコスト圧迫要因となっている。これに加えて、使用されている太陽光パネルの生産がほぼ中国の独占となっており、製造業へのメリットが大幅に減少している。
● 風力発電は、太陽光と比較するとより安定した電源であり、欧州北部である程度活用されている。ただし、その活用のためには安定した風況が期待できる適地が有ることと高い技術力が必要である。
● 北欧各国では、大量に手に入れることが可能な水が有効利用され、水力発電を活用している。ノルウェーでは自国で生産される天然ガスは発電に使わず電力の95%を水力で賄い、天然ガスは輸出に廻してきた。北海油田はほぼ掘りつくされてきてはいるが、それでも世界第3位の天然ガス輸出国となっている。スウェーデンで約45%、フィンランドでも約25%が水力発電によって供給されている。
● 先進国の多くは原子力がやはり必要であると認識し、ある程度の電力を原子力で賄っている。例えばフランスを例にとると、オイル・ショックを経験した結果日本とほぼ同時期に電力を原子力で賄うという方針を採用し、今では70%程を原子力で賄っている。日本が参考にしたがるドイツでも、原子力発電を止めると言いながらも、約10数%は未だに原子力発電で賄っている。また、中国では沿海部の膨大な人口の需要を賄うため、これまでに49基の原子力発電炉を立ち上げ既に世界第3位の原子力大国となっており、今後更に開発を加速させる計画を立てている。
● 日本原子力産業協会によれば、米国では1970〜80年代は、トラブル等により平均設備利用率が50%台と低迷した。しかし、 プラントの改造や検査・保守、燃料交換作業の効率化により、運転実績の改善を 果たし、2017年には92.6%と過去最高を記録している。これにより、発電設備容量は横ばいながらも、発電電力量は増加してきており、発電全体に占める原子力のシェアは約20%を維持している、ということである。このような経緯をたどって来ることが出来た米国の原子力発電事情をみると、規制当局であるNRCの大きな改革により、リスクという物差しを導入した安全規制を行ったことによると理解できる。
2.日本の知見、技術力を活かして実現すべきこと


以上のように海外では脱炭素の為に夫々の国情に合った電源構成を実現していることが参考となる。一方、日本の近年のエネルギー政策を振り返ってみると、民主党政権時代の福島事故の影響を強く受け、原子力発電忌避、太陽光発電偏重が著しく、バランスを欠いた電源構成を助長するような施策に終始してきた。


また、原子力発電を縮小しながら電力需要を賄うため、また増え続ける太陽光発電の過不足分を調整するために、火力発電への依存度が極端に高まっており、一昨年末のCOP25の開催時期に国際環境団体から日本が不名誉な化石賞を受賞したことはまだ記憶に新しい。地球温暖化対策及びエネルギー安全保障の観点からも、今や冷静に日本の置かれている立場を考え、感情論に振り回されないしっかりした電源構成を確立するために、日本の地政学上の立地と持てる技術を有効利用する方策を考えるべき時が来た。



● 既に関係省庁の担当者も認識していると思われるが、太陽光発電への依存が強すぎるとその変動電源としての特徴から、発電を抑制しなくてはならない事態が生ずることはSEJだよりの8号で詳しく説明した。また、大規模に太陽光パネルを設置する適地を得るためには農地、森林などを避けて可住地を利用する必要があり、人口密度が高い日本ではメガ・ソーラーの開発はそろそろ止める時期に差し掛かっていると言えよう。今後は住宅、工場の屋根などに設置して地産地消を図り、緩やかに太陽光発電設備を増やすべきである。太陽光発電の幹線網への送電量が下がれば、需要家の経済的負担も軽減されていくであろう。また、太陽光パネルの生産を中国に独占されることの無いように、日本のメーカの技術力を活かした発電効率の高い先進的な太陽光発電パネルの開発を支援すべきである。
● 更に太陽光を有効利用するためには安価で効率の良い大容量蓄電池の早期開発が欠かせない。既にリチウム・イオン電池が$150/kWhの水準まで価格が下がっているとの情報もあるが、大量生産の体制を整えて更なる価格低減を実現すべきである。


● 日本は急峻な山が多くきれいな水に恵まれているという水力発電に適した地形となっている。既に水力発電用ダムの開発可能なところはほぼ利用し尽くされているとの説もあるが、太陽光発電の余剰分を活用する揚水発電のための再開発や中小を含む色々な規模の発電所の開発は高い可能性を秘めていると考えられる。幸い、1950年代から1980年頃まで、電源開発(株)をはじめ全ての電力会社が揚水発電所を含む大規模水力発電所の建設、運転の経験を蓄積しており、これからもその知見を活かして多様な発電所の更なる開発を担当していくべきである。
● また、日本は海に囲まれており、4つの大きな海流が膨大なエネルギーを抱えて日本近海を流れている。このエネルギーを取り出す海流発電は、一般財団法人エンジニアリング振興協会や東京大学などが、IHI、三菱重工などの機器メーカと組んで実用化研究を行っている。この開発努力を支援して早期実現を図ることも考えて貰いたい。


3.エネルギー基本計画策定において、今議論すべきこと
以上述べてきたように、世界各国はそれぞれ自国の状況にあった電源構成を実現してきている。日本は、ドイツなど一部の国の取り組みをひたすらに模倣するのではなく、日本に合った電源構成を念頭に今次のエネルギー基本計画の策定において、我が国の強みが発揮できるような方針が示されることを期待したい。再生可能エネルギーだけで2050年のカーボン・ニュートラルの実現は極めて困難であり、原子力発電を併用することは当然であると考えるべきである。
現在行われている第6次エネルギー基本計画の策定作業は一部原子力懐疑派の意見が出てはいるものの、概ね望ましい方向での議論が進んでいるように見える。しかしながら、懸念されるのは、現在の化石燃料の大量使用により足元に火がついているにも拘らず当面のエネルギー消費構造を抜本的に改める議論が大してなされず、将来の技術開発に大きな期待をかけて議論が進んでしまうことである。
福島事故の経験を踏まえて原子力の安全規制の見直しを行い、安全性向上が進められていることは評価できるが、再稼働に至るには長期間を要することが問題になっている。
多くの原子力発電所がすぐにでも稼働が可能な状態であるのに待機状態になっており、我が国が保有する高額の資産が有効利用されない状況となっている。
◉まずは、原子力発電所の再稼働を急ぐことにより、当面の電力供給に不安が無い状態を作ることが先決であり,その後に2030年、2050年を見据えて、我が国の技術力を活かした最良であると考えられる電源構成を実現すべく議論を進めて欲しいものである。
●近未来の電力需要を賄う上で必須である原子力発電所の新増設も、日本の技術者、技術力の維持のためにも避けて通るべきではなく、客観的で冷静な議論を期待したい。更に、最近顕在化している新電力の価格問題、供給予備率の逼迫問題などを解決する重要な手段として原子力が果たす役割も正当な議論がなされることを望むものである。

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