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SEJ 日本のエネルギーを考える会

149号 2050年に向けての考慮すべき課題(5) −太陽光発電を主役にするには!!−


カテゴリ:  エネルギー  » 再生可能エネルギー    2017-9-23 20:10   閲覧 (2645)


太陽光発電は構造が複雑ではなく、また発電効率も将来は飛躍的に向上する可能性があり、いかに電力供給システムに取り込むかが課題になります。太陽光発電の割合が増えてくると、太陽があたるピークでは全需要に匹敵する電気が出るため、その変動に対応するのが課題になる。どのような問題があるか、どうすべきかを検討した。
1.はじめに
国は2050年に向けてのエネルギー基本計画と2050年時点での長期的なエネルギー政策の方向性を検討するために、2017年8月9日に総合エネルギー調査会基本政策分科会を8月30日にエネルギー情勢懇談会を発足させた。


国は2050年に向けてのエネルギー基本計画と2050年時点での長期的なエネルギー政策の方向性を検討するために、2017年8月9日に総合エネルギー調査会基本政策分科会を、8月30日にエネルギー情勢懇談会を発足させた。
ここでは、2050年にCO2を80%削減するには、国内の既存技術だけでの対策では限界があり、既存技術の最大限の活用とイノベー ションの創出を必要とするとし、電力分野では低炭素電源(再生可能エネルギー、 CCS付火力発電、原子力発電)が9割必要になると指摘している。
私たちはIOJだより143号で、「2050年に向けて、パリ協定の温暖化対策としてか、自給率の向上としてか、のいずれを実現するにしても、化石燃料の使用量の削減を目標にする必要があるが、今のエネルギー基本計画の延長では目標が達成できそうもない。まずは化石燃料を大量に使う発電分野について、火力発電を段階的に廃止してはどうでしょうか?」と提案した。
本稿では2050年に向けて電力供給の主力となる太陽光発電をどのようにしたら日本の仕組みにマッチできるか検討した。
2.2050年に向けてエネルギー供給をどうするか
自給率の向上とCO2削減が課題だが、日本ではまだ具体的な検討が行われていない。
World Energy Outlook 2016(以下WEO2016)では450シナリオ(温度上昇を2℃以内に抑えるためのシナリオ)があり、日本をはじめ、主要国や地域の評価があるのでこれをもとに分析してみた。
2040年の発電量の内訳は
表に示すように原子力が299Twh、太陽光が113Twh、風力が99Twh、水力が128Twh、バイオ・地熱が100Twhとなっており、太陽光発電の発電量は総発電量の13%だが、発電設備能力としては全体の30%を占めており、原子力発電容量の2倍、火力(ガス、石油、石炭)の合計に匹敵する容量であり、太陽光発電のピーク時にはこれら他電源を制限しなければならない。
太陽光発電は、日本では電力量が最も期待できる再生可能エネルギー源だが、この問題を解決しない限り主力電源にはなりえない。
なお、化石燃料が大きく減っていないのは発生するCO2を地下に貯蔵することも考慮しているようだ。


3.変動する太陽光発電の実情
太陽光発電の導入が進んでいる九州電力の電源別、時間ごとの発電量の積み上げの内訳をみてみよう。
上図は2016年7月の第一週の電力供給の内訳である。図は火力、原子力、太陽光、水力などの積み上げを示すが、大きく変動する太陽光発電に対応して火力発電の供給が変動していることが分かる。
将来、現状より仮に太陽光発電を3.5倍に、原子力を2倍に増やした場合を下図に示す。このままでは巨大な太陽光の発電出力とバランスをとるためは、火力、水力、原子力などを止めなければならない。

そして、2050年に脱化石や脱CO2を進めるためには、太陽光発電や原子力発電の規模を更に拡大する必要がある。太陽光発電の変動に対して今の原子力発電の設計では急激な負荷変動対応が難しく、新たな原水力発電の開発や後述する変動を吸収できる新たな需要が必要となる。
一方、今年の8月のように全国的に、一ヶ月近く雨天や曇天が続く場合は、長期に亘り太陽光発電からの電力が途絶えるので、晴天時には必要のない原子力や他の再生可能エネルギーの発電設備を待機させておく必要がある。このような対応では、発電設備の稼働率が損なわれ、現実的ではない。
電力が余った場合や不足した場合には、電力を周辺電力と融通して調整すれば良いと考えるだろう。しかし、例えば、太陽の日照は右図に示すように九州、中国、関西まで同時に変動するので事情は同じである。
このように、大量の太陽光発電の変動を調整するためには、現状の電力供給の仕組みでは解決できず、他の方法を考えなければならない。



4.どうしたらよいのか
発電にこだわらず輸送部門で有効利用する
太陽光発電は優れた電源ではあるが、少量の電力量ならともかく、変動する電力を既存の電力網に乗せ、料金の回収を電力会社に代行させようとしたことに無理がある。


再生可能エネルギーの導入は、化石燃料の削減による自給率の向上とCO2排出削減が目的であるということを忘れてはならない。
化石燃料の利用は火力発電に使われるものと、輸送(自動車、船舶、航空機)に使用する石油が主なものである
WEO2016 から発電部門と輸送部門の2014年と2040年(450シナリオ)のエネルギー消費量(石油換算)を示す。2040年に輸送に使用する石油換算量は2014年の72Mtoeから39Mtoe へと約半分にしなければならない。この削減量は2040年に発電に投入する他の再生可能エネルギー(太陽、風力等)のエネルギーに匹敵する量である。
欧州でのガソリン車やジーゼル車を廃止し電気自動車に切り替える動向と一致していると言えよう。米国ではメタノールなどを燃料に使うことも検討している。
日本では電気自動車の他に水素系の燃料も検討している。
このような背景を考えるなら太陽光発電を積極的に導入するためには、今の電力系統とは分離し、発電した電力を電気自動車の充電や水素系燃料の製造に使うことも考えるべきであろう。



エネルギー貯蔵の技術を開発する
太陽光発電の負荷変動を吸収するため、電力間の電力融通や揚水発電などを検討しているが容易ではない。
負荷変動に対応するためには秒単位から時間単位、日単位、週単位、月単位までの対応、需要側、配電側、供給側での対応など様々の技術が考えられるが多くは実用化されていない。



揚水発電にはどれだけ頼れるか
揚水発電量が大きかった2003年の9電力の水力発電量は724億Kwhであり、その内、揚水発電量は14%の95億Kwhであった。太陽光による総発電量(2040年)1130億Kwhの10%程度である。この程度の量では短時間の負荷変動吸収はありうるが、大きな調整力の期待はできない。


ローテクの電気温水器の活用
フランスは1961年から、負荷変動にスムースに対応するため家庭での温水貯蔵技術を積極的に進めており、家庭用の電力の43%が使われている。フランスでは原子力発電が70%以上を占めているため、需要の少ない夜間にできるだけ温水器による蓄熱を進め昼間の需要を削減するとともに、昼間のピークロード需要を過ぎて急激に需要が低減する時間帯には再度温水器での蓄熱を進め、全体として負荷変動を滑らかにしている(図)。そのため、フランスでは家庭の1/3が2つの時間でオンオフ(夜間と昼間にオンオフする)する電気温水器が使われている。そしてピーク時では0.13ユーロ/Kwh、それ以外では0.10ユーロ/Kwhとオフ・ピーク時には30%安くなっている。青線は冬季の家庭での温水器の使用状況を示しているが、夜間と昼間のピークを過ぎた時間帯に温水器が使われており、茶色の国全体の負荷が平たん化されていることが分かる。(Technology Roadmap Energy storage 2014  IEA )
日本では、家庭での太陽光発電の電気は積極的に系統に入れるようにしているため、負荷変動を助長することになっている。フランスの取り組みに倣って、時間帯によっては昼間でも家庭の電気温水器などに蓄熱するようにすれば太陽光による急激な変動を調整できるようになるであろう。



家庭用ソーラシステムと蓄電器の組み合わせ
三菱総研は経産省の委託を受けて平成28年度にソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査を行っている。蓄電池の価格が十分に低下し、需要家にとって蓄電池を導入するほうが導入しないよりも経済的である状態になれば、蓄電池の「自発的」な導入が進むと考えられる。太陽光発電パネルを保有していない平均的な住宅において電力の余剰買取がなくても、蓄電池価格が7万円/kWh前後まで低下すれば、太陽光発電パネルの価格低下の程度に関わらず、6kWh程度の蓄電池を導入することが最適になると評価している。今の予想ではこの蓄電池価格に到達するのは2020年代後半と見込まれる。そして、2030年の住宅の太陽光発電パネル導入量は、足元の伸びや新築住宅の増加を考慮すると、19GW(430万世帯)に達すると見込まれる。
今後、電気自動車が大半の乗用車に適用される時代になれば、過剰に発電される時間帯には電気自動車のバッテリーに蓄電でき、太陽光発電の変動問題は解決するかもしれない。



太陽光発電を利用した水素製造
アルカリ性の溶液に電流を流すことによって水素と酸素を低コストで分離するアルカリ水電解システムの開発が行われている。理論値でも1㎥の水素製造に3.6kWh の電力(現実は5〜6kWh)が必要であり、電力コストが相当程度安くないと採算が取れない。水素製造の効率向上、大規模化への対応、再生可能エネルギーの負荷変動への対応 などが今後の課題となっている。




太陽光発電のコストも大幅に下がる
太陽光発電パネルは変換効率が23%台まで達しているが、原理が異なる画期的な「量子ドット型太陽電池」が開発中であり、これが実現すると変換効率は約50%にまで向上すると考えられている。発電単価は原子力発電を上回る7円/Kwhと評価されており、発電の考えが変わるかもしれない。
このような時代には、どのように太陽光発電を利用するかが問われることになり、電気事業者も主力となる原子力発電と太陽光発電をうまくマッチできる仕組みを考えなければならない。



5.まとめ
変動する太陽光発電を大量に利用する場合、昼間にはほぼ全電力が太陽光発電だけで供給されることになり、現在の電力システムでは、原子力などの他電源で調整が必要になる。そのためには太陽光発電がピークに近い時間帯への対応として、例えば、
電気自動車への充電、家庭用、商業用の温水器、冷水器への給電
太陽光発電による水素製造など既存の電力システムと切り離した仕組み
家庭用太陽光発電の電力系統への送電の禁止
大規模揚水発電所の増設
など新しい方式を考えることによって太陽光発電の積極的な導入を後押しする必要がある。



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149号 2050年に向けての考慮すべき課題(5) −太陽光発電を主役にするには!!−


カテゴリ:  エネルギー » 再生可能エネルギー    2017-9-23 20:10   閲覧 (2645)


太陽光発電は構造が複雑ではなく、また発電効率も将来は飛躍的に向上する可能性があり、いかに電力供給システムに取り込むかが課題になります。太陽光発電の割合が増えてくると、太陽があたるピークでは全需要に匹敵する電気が出るため、その変動に対応するのが課題になる。どのような問題があるか、どうすべきかを検討した。
1.はじめに
国は2050年に向けてのエネルギー基本計画と2050年時点での長期的なエネルギー政策の方向性を検討するために、2017年8月9日に総合エネルギー調査会基本政策分科会を8月30日にエネルギー情勢懇談会を発足させた。


国は2050年に向けてのエネルギー基本計画と2050年時点での長期的なエネルギー政策の方向性を検討するために、2017年8月9日に総合エネルギー調査会基本政策分科会を、8月30日にエネルギー情勢懇談会を発足させた。
ここでは、2050年にCO2を80%削減するには、国内の既存技術だけでの対策では限界があり、既存技術の最大限の活用とイノベー ションの創出を必要とするとし、電力分野では低炭素電源(再生可能エネルギー、 CCS付火力発電、原子力発電)が9割必要になると指摘している。
私たちはIOJだより143号で、「2050年に向けて、パリ協定の温暖化対策としてか、自給率の向上としてか、のいずれを実現するにしても、化石燃料の使用量の削減を目標にする必要があるが、今のエネルギー基本計画の延長では目標が達成できそうもない。まずは化石燃料を大量に使う発電分野について、火力発電を段階的に廃止してはどうでしょうか?」と提案した。
本稿では2050年に向けて電力供給の主力となる太陽光発電をどのようにしたら日本の仕組みにマッチできるか検討した。
2.2050年に向けてエネルギー供給をどうするか
自給率の向上とCO2削減が課題だが、日本ではまだ具体的な検討が行われていない。
World Energy Outlook 2016(以下WEO2016)では450シナリオ(温度上昇を2℃以内に抑えるためのシナリオ)があり、日本をはじめ、主要国や地域の評価があるのでこれをもとに分析してみた。
2040年の発電量の内訳は
表に示すように原子力が299Twh、太陽光が113Twh、風力が99Twh、水力が128Twh、バイオ・地熱が100Twhとなっており、太陽光発電の発電量は総発電量の13%だが、発電設備能力としては全体の30%を占めており、原子力発電容量の2倍、火力(ガス、石油、石炭)の合計に匹敵する容量であり、太陽光発電のピーク時にはこれら他電源を制限しなければならない。
太陽光発電は、日本では電力量が最も期待できる再生可能エネルギー源だが、この問題を解決しない限り主力電源にはなりえない。
なお、化石燃料が大きく減っていないのは発生するCO2を地下に貯蔵することも考慮しているようだ。


3.変動する太陽光発電の実情
太陽光発電の導入が進んでいる九州電力の電源別、時間ごとの発電量の積み上げの内訳をみてみよう。
上図は2016年7月の第一週の電力供給の内訳である。図は火力、原子力、太陽光、水力などの積み上げを示すが、大きく変動する太陽光発電に対応して火力発電の供給が変動していることが分かる。
将来、現状より仮に太陽光発電を3.5倍に、原子力を2倍に増やした場合を下図に示す。このままでは巨大な太陽光の発電出力とバランスをとるためは、火力、水力、原子力などを止めなければならない。

そして、2050年に脱化石や脱CO2を進めるためには、太陽光発電や原子力発電の規模を更に拡大する必要がある。太陽光発電の変動に対して今の原子力発電の設計では急激な負荷変動対応が難しく、新たな原水力発電の開発や後述する変動を吸収できる新たな需要が必要となる。
一方、今年の8月のように全国的に、一ヶ月近く雨天や曇天が続く場合は、長期に亘り太陽光発電からの電力が途絶えるので、晴天時には必要のない原子力や他の再生可能エネルギーの発電設備を待機させておく必要がある。このような対応では、発電設備の稼働率が損なわれ、現実的ではない。
電力が余った場合や不足した場合には、電力を周辺電力と融通して調整すれば良いと考えるだろう。しかし、例えば、太陽の日照は右図に示すように九州、中国、関西まで同時に変動するので事情は同じである。
このように、大量の太陽光発電の変動を調整するためには、現状の電力供給の仕組みでは解決できず、他の方法を考えなければならない。



4.どうしたらよいのか
発電にこだわらず輸送部門で有効利用する
太陽光発電は優れた電源ではあるが、少量の電力量ならともかく、変動する電力を既存の電力網に乗せ、料金の回収を電力会社に代行させようとしたことに無理がある。


再生可能エネルギーの導入は、化石燃料の削減による自給率の向上とCO2排出削減が目的であるということを忘れてはならない。
化石燃料の利用は火力発電に使われるものと、輸送(自動車、船舶、航空機)に使用する石油が主なものである
WEO2016 から発電部門と輸送部門の2014年と2040年(450シナリオ)のエネルギー消費量(石油換算)を示す。2040年に輸送に使用する石油換算量は2014年の72Mtoeから39Mtoe へと約半分にしなければならない。この削減量は2040年に発電に投入する他の再生可能エネルギー(太陽、風力等)のエネルギーに匹敵する量である。
欧州でのガソリン車やジーゼル車を廃止し電気自動車に切り替える動向と一致していると言えよう。米国ではメタノールなどを燃料に使うことも検討している。
日本では電気自動車の他に水素系の燃料も検討している。
このような背景を考えるなら太陽光発電を積極的に導入するためには、今の電力系統とは分離し、発電した電力を電気自動車の充電や水素系燃料の製造に使うことも考えるべきであろう。



エネルギー貯蔵の技術を開発する
太陽光発電の負荷変動を吸収するため、電力間の電力融通や揚水発電などを検討しているが容易ではない。
負荷変動に対応するためには秒単位から時間単位、日単位、週単位、月単位までの対応、需要側、配電側、供給側での対応など様々の技術が考えられるが多くは実用化されていない。



揚水発電にはどれだけ頼れるか
揚水発電量が大きかった2003年の9電力の水力発電量は724億Kwhであり、その内、揚水発電量は14%の95億Kwhであった。太陽光による総発電量(2040年)1130億Kwhの10%程度である。この程度の量では短時間の負荷変動吸収はありうるが、大きな調整力の期待はできない。


ローテクの電気温水器の活用
フランスは1961年から、負荷変動にスムースに対応するため家庭での温水貯蔵技術を積極的に進めており、家庭用の電力の43%が使われている。フランスでは原子力発電が70%以上を占めているため、需要の少ない夜間にできるだけ温水器による蓄熱を進め昼間の需要を削減するとともに、昼間のピークロード需要を過ぎて急激に需要が低減する時間帯には再度温水器での蓄熱を進め、全体として負荷変動を滑らかにしている(図)。そのため、フランスでは家庭の1/3が2つの時間でオンオフ(夜間と昼間にオンオフする)する電気温水器が使われている。そしてピーク時では0.13ユーロ/Kwh、それ以外では0.10ユーロ/Kwhとオフ・ピーク時には30%安くなっている。青線は冬季の家庭での温水器の使用状況を示しているが、夜間と昼間のピークを過ぎた時間帯に温水器が使われており、茶色の国全体の負荷が平たん化されていることが分かる。(Technology Roadmap Energy storage 2014  IEA )
日本では、家庭での太陽光発電の電気は積極的に系統に入れるようにしているため、負荷変動を助長することになっている。フランスの取り組みに倣って、時間帯によっては昼間でも家庭の電気温水器などに蓄熱するようにすれば太陽光による急激な変動を調整できるようになるであろう。



家庭用ソーラシステムと蓄電器の組み合わせ
三菱総研は経産省の委託を受けて平成28年度にソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査を行っている。蓄電池の価格が十分に低下し、需要家にとって蓄電池を導入するほうが導入しないよりも経済的である状態になれば、蓄電池の「自発的」な導入が進むと考えられる。太陽光発電パネルを保有していない平均的な住宅において電力の余剰買取がなくても、蓄電池価格が7万円/kWh前後まで低下すれば、太陽光発電パネルの価格低下の程度に関わらず、6kWh程度の蓄電池を導入することが最適になると評価している。今の予想ではこの蓄電池価格に到達するのは2020年代後半と見込まれる。そして、2030年の住宅の太陽光発電パネル導入量は、足元の伸びや新築住宅の増加を考慮すると、19GW(430万世帯)に達すると見込まれる。
今後、電気自動車が大半の乗用車に適用される時代になれば、過剰に発電される時間帯には電気自動車のバッテリーに蓄電でき、太陽光発電の変動問題は解決するかもしれない。



太陽光発電を利用した水素製造
アルカリ性の溶液に電流を流すことによって水素と酸素を低コストで分離するアルカリ水電解システムの開発が行われている。理論値でも1㎥の水素製造に3.6kWh の電力(現実は5〜6kWh)が必要であり、電力コストが相当程度安くないと採算が取れない。水素製造の効率向上、大規模化への対応、再生可能エネルギーの負荷変動への対応 などが今後の課題となっている。




太陽光発電のコストも大幅に下がる
太陽光発電パネルは変換効率が23%台まで達しているが、原理が異なる画期的な「量子ドット型太陽電池」が開発中であり、これが実現すると変換効率は約50%にまで向上すると考えられている。発電単価は原子力発電を上回る7円/Kwhと評価されており、発電の考えが変わるかもしれない。
このような時代には、どのように太陽光発電を利用するかが問われることになり、電気事業者も主力となる原子力発電と太陽光発電をうまくマッチできる仕組みを考えなければならない。



5.まとめ
変動する太陽光発電を大量に利用する場合、昼間にはほぼ全電力が太陽光発電だけで供給されることになり、現在の電力システムでは、原子力などの他電源で調整が必要になる。そのためには太陽光発電がピークに近い時間帯への対応として、例えば、
電気自動車への充電、家庭用、商業用の温水器、冷水器への給電
太陽光発電による水素製造など既存の電力システムと切り離した仕組み
家庭用太陽光発電の電力系統への送電の禁止
大規模揚水発電所の増設
など新しい方式を考えることによって太陽光発電の積極的な導入を後押しする必要がある。



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