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SEJ 日本のエネルギーを考える会

「125号原子力を元気にする」を読んで 読者からの感想


カテゴリ:  原子力規制  » 文明論    2016-6-7 19:00   閲覧 (2131)
1.澤氏のいう原子力は「将来のリスクに備えた安全装置」 は余りに弱い表現
IOJだより第125号と澤氏の遺稿を読んでの感想と私見を述べます。
日本におけるエネルギー政策上の原子力の役割、位置づけは、福島事故以前に描かれていたような主要な供給源(民主党の前期時代の政策が代表例)とはなりえず、澤氏は「将来のリスクに備えた安全装置」としてのオプションと位置づけています。これは余りに弱い表現のように思われます。意図することはエネルギー基本計画やエネルギーミックスで述べられているものが真相に近いものでしょう。
福島事故、高レベル放射性廃棄物の処分問題、テロ攻撃のターゲットになる可能性等を考えると原子力利用には多くの懸念あるいはリスクがありえることは事実です。しかし原子力利用判断のベースはIOJだよりで述べられているように、利用に伴うリスクと利用しないリスクの総合的判断によるべきでしょう。その結果が上記と言えます。筆者も原子力を現状において進める(再稼働を進める)ことを容認するのはこのことによります。IOJだよりが述べているような両者のリスクを定量的に述べることは容易なことではありませんが、各観点におけるシミュレーションを半定量的に示すことはより深い理解につながるものと考えられます。
2.国としての政策判断に基づく確固たる表明がない限りは、競争原理の渦中に置かれた現在の電気事業者単独の判断では原子力は維持できない
2030年における原子力の比率20~22%も実際問題苦しいところですが、その先電力自由化、大事故のリスク、国民と地域住民の消極的(懐疑的)姿勢、規制強化による経済性の低下等を考えると、現在の電気事業者が本当に新増設を進める経営的判断を行えるか、澤氏の指摘のとおり楽観を許せないと思われます。電力自由化の環境のもとで、原則的には原子力に特別な優遇は図れないので、国としての政策判断に基づく確固たる表明がない限りは、競争原理の渦中に置かれた現在の電気事業者単独の判断では原子力は維持できないと思われます。1足先に同じ環境下で試行錯誤を経た英国の例は参考になることでしょう。
それ以前に、再稼働、使用済燃料の新たな貯蔵施設の設置、廃炉、高レベル廃棄物の処分問題を乗り切るためには、国民の理解が欠かせません。福島事故の重い経験からの教訓をどこでどう反映させたのか全体的な説明が不可欠ですが、相変わらず明確に表明されないままなのは大きな問題で、IOJだよりが指摘されているとおりです。「原子力を元気にするため」の基本はこの点にあると考えます。これに関連して原子力学会での検討結果「学会事故調最終報告書における提言への取り組み状況」は、その真摯な取り組みに共感を覚えます。
規制委員会の在り方、事業者、開発者側との絶えざる意見交換の必要性は全く同感です。現状では外部の声を反映する姿勢が見えないのは大きな問題です。

「125号原子力を元気にする」を読んで 読者からの感想


カテゴリ:  原子力規制 » 文明論    2016-6-7 19:00   閲覧 (2131)
1.澤氏のいう原子力は「将来のリスクに備えた安全装置」 は余りに弱い表現
IOJだより第125号と澤氏の遺稿を読んでの感想と私見を述べます。
日本におけるエネルギー政策上の原子力の役割、位置づけは、福島事故以前に描かれていたような主要な供給源(民主党の前期時代の政策が代表例)とはなりえず、澤氏は「将来のリスクに備えた安全装置」としてのオプションと位置づけています。これは余りに弱い表現のように思われます。意図することはエネルギー基本計画やエネルギーミックスで述べられているものが真相に近いものでしょう。
福島事故、高レベル放射性廃棄物の処分問題、テロ攻撃のターゲットになる可能性等を考えると原子力利用には多くの懸念あるいはリスクがありえることは事実です。しかし原子力利用判断のベースはIOJだよりで述べられているように、利用に伴うリスクと利用しないリスクの総合的判断によるべきでしょう。その結果が上記と言えます。筆者も原子力を現状において進める(再稼働を進める)ことを容認するのはこのことによります。IOJだよりが述べているような両者のリスクを定量的に述べることは容易なことではありませんが、各観点におけるシミュレーションを半定量的に示すことはより深い理解につながるものと考えられます。
2.国としての政策判断に基づく確固たる表明がない限りは、競争原理の渦中に置かれた現在の電気事業者単独の判断では原子力は維持できない
2030年における原子力の比率20~22%も実際問題苦しいところですが、その先電力自由化、大事故のリスク、国民と地域住民の消極的(懐疑的)姿勢、規制強化による経済性の低下等を考えると、現在の電気事業者が本当に新増設を進める経営的判断を行えるか、澤氏の指摘のとおり楽観を許せないと思われます。電力自由化の環境のもとで、原則的には原子力に特別な優遇は図れないので、国としての政策判断に基づく確固たる表明がない限りは、競争原理の渦中に置かれた現在の電気事業者単独の判断では原子力は維持できないと思われます。1足先に同じ環境下で試行錯誤を経た英国の例は参考になることでしょう。
それ以前に、再稼働、使用済燃料の新たな貯蔵施設の設置、廃炉、高レベル廃棄物の処分問題を乗り切るためには、国民の理解が欠かせません。福島事故の重い経験からの教訓をどこでどう反映させたのか全体的な説明が不可欠ですが、相変わらず明確に表明されないままなのは大きな問題で、IOJだよりが指摘されているとおりです。「原子力を元気にするため」の基本はこの点にあると考えます。これに関連して原子力学会での検討結果「学会事故調最終報告書における提言への取り組み状況」は、その真摯な取り組みに共感を覚えます。
規制委員会の在り方、事業者、開発者側との絶えざる意見交換の必要性は全く同感です。現状では外部の声を反映する姿勢が見えないのは大きな問題です。

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