SEJだより 第15号 温暖化もあるが寒冷化もある ―地球の運動に伴って起きる気候変動 ミランコビッチサイクル―
先進国が排出したCO2を原因とする地球温暖化対策は先進国が主として対応が求められる問題であるのに対し、今回、取り上げる「地球の運動に伴う気候変動は太陽と地球の運動」による気候変動は自然現象であることが特徴である。氷期の入るのは数万年後のこと(ただし、CO2の濃度が工業化前のレベルに下がると1500年後の説もある)で我々は心配ないが、気候には温暖化ではない寒冷化もあることを紹介したい。
「地球の運動に伴って起きる気候変動」では、80万年19回続く氷河サイクルは約2万年まえに終わり、新しい氷河サイクルの間氷期に入っており、いつ氷期に入るかが注目されている。
IPCCや気候研究者は、大陸が氷河に覆われる氷期は3万年程度先であり心配ないと言うが、氷期は地球温暖化とは比較にならない厳しいものであるので、その見通しについて概要を紹介する。
1.氷期は人類にとって厳しい試練であった
前回の氷期MIS5e(注)は最長で、ネアンデルタール人が滅亡するほど寒冷な気候であった。また、新しい氷河サイクルMS1の間氷期に入ってからも、紀元前6〜7千年には、北米の氷床が溶け関東や大阪の内陸部まで海に覆われていた縄文海進を経験している。地球温暖化による影響とは規模が違うのである。このようなことから、次の氷期にいつ入るかを推定し、対策が考えられれば、人類の将来に大いに役立つのである。(注 MIS:Marine oxygen Isotope Stage)