1.消費税増税延期の判断は正しいか
安倍首相が伊勢・志摩サミット後に消費税増税時期を当初予定よりも2.5年先へと変更した。サミットで話題となった世界的な景気低迷に対処するために、可能な限りの政策を実行するとの約束の一つを果たそうということである。
これに対して、民進党の岡田代表が「日本の景気低迷の結果消費税増税を延期するということは、アベノミクスの失敗が原因であるゆえ、安倍内閣に不信任案を野党共同で提出する」と言い出した。
この二人の発言から次のような思いが胸をよぎってゆく。
経済は複合的な理由によっていろいろ複雑な動きをするので、一面的な観点から判断することは危険が伴う。しかしながら、我々IOJの立場から現在の景気低迷を考えると、矢張り国内の原子力発電所の再稼働が遅れていることにより、電力料金が高騰していることが無視できない影響を与えている要因となっているとの結論に至るのである。
2.再生可能エネルギーの普及で電力供給は困らないという夢物
下の図を見て欲しい。再生可能エネルギーに依存できると考えたドイツでは、高騰している日本の電気料金をはるかにしのいで、約1.6倍となっているのである。一方、フランスは原子力を主たる電源としているため、日本の0.8倍と低く抑えることができている。このような現実があるにも関わらず、福島事故以来、反原子力を標榜する市民活動家が勢いを得て「原子力発電所は無い方が良い」、「再生可能エネルギーの普及で電力供給には困らない」との誤った夢物語を広く国民に植え付けてしまった。IOJではこれまでに「再生可能エネルギーだけに頼ることはできない。エネルギー資源の乏しい我が国では、原子力発電はなくてはならないものである」、「原子力発電が行われないと、電気料金の高騰を招き、日本経済に深刻な悪影響をもたらす」との主張を何回も繰り返してきた。この私達の主張、危惧が現実となって、今の日本の景気低迷を引き起こす重要な原因の一つとなっているのではないか。
3.経済の立て直しのために再稼働の実現が重要な理由
安倍首相が、可能な限りの政策をすべて採用して経済を立て直すというのであれば、まず手を付けるべきは原子力発電所の再稼働の実現である。今日現在稼働している原子力発電所は川内原子力発電所の2基だけとなってしまった。原子力発電所不稼働の対策として化石燃料の調達が行われ、事故以来これまでに燃料代として国外に流出した国富は20兆円に上ると言われている。これ程の金額を財政政策に有効利用してくれば、現在の悲惨な経済状態が現出することはなかったのではないか。原子力発電所の再稼働がこれからも長期にわたり実現しないと、年間3兆円〜4兆円が燃料費として浪費され続けることになるのである。下の図のとおり、資源エネルギー庁の試算では、原子力発電が賄っていた分を火力発電所が賄う結果、2014年度の化石燃料調達による費用増は3.7兆円となっている。一方、消費税率を1%上げると2兆円の税収効果があるという。現行の8%を10%に上げたとしても、年間に得られる歳入は4兆円しか増えない。原子力発電所の再稼働により減らすことのできる燃料代の流出と、消費税率を2%上げた際の歳入の増加がほぼ拮抗していることが分かる。ここで大きく違ってくるのは、燃料代は支払ってしまえば消えてしまう国富であるのに対して、消費税として国に納めた税金は日本国内にとどまり、財政出動などによって国民に還元されることが可能な資金となり得るということである。再稼働が重要であるとの主張の根拠がここにある。
4.電気代の高騰は産業の死活問題
電気代の高騰について見てみよう。2010年度の 最後に福島事故が起こったのであるが、右の経産省発表のデータで2010年度から2013年度までの電気料金の推移を示している。これによれば、2010年度の平均的な家庭の電気料金(電灯)はKWhあたり¥20.37であった。これが2013年度には¥24.33と19.3%の上昇となっているのである。為替や油価の変動の効果があって、一概には比較が難しいのであるが、それでも19%以上の上昇があったことは否定できない現実なのである。
一方、産業用の電力料金は2010年度にKWhあたり¥13.65であったものが、2013年度には¥17.53と実に28.4%も上昇しているのである。電炉各社など電力の多消費産業では、30%弱の利益率の会社など存在するはずもなく、死活問題ともなっていることが容易に理解できよう。
5.先進国の中ではとりわけ低い日本の消費税率
日本の消費税は、先進国の中では飛び抜けて低い税率である。これを上げなければ、財政の健全化など実現不能であることは、自民党が一番良く認識している現実であろう。原子力発電所の早期再稼働の実現を果たして経済を安定化させれば、消費税増税時期を遅らせるなどの必要は無く、長期的に安定した政権運営ができるのにとの思いがぬぐえない。安倍首相には、日本の原子力開発の基盤となってきた「国策民営」の理念を再確認し、強いリーダーシップを発揮して、原子力発電の正常化に取り組んでもらいたい。
6.日本の経済を破壊したのは民主党政権
一方、民進党岡田代表の言い掛かりはどうであろうか?民主党が政権を担っていた時代の政権担当能力の欠落は今でも鮮明に記憶に残っている。有りもしない埋蔵金を掘り出すと称して「事業仕分け」を行い、成果が出ないのに嫌気した担当議員が「二番ではいけないのか」と言って日本中の顰蹙を買ったことを記憶している読者も多いことであろう。福島事故の発生がこの様な政権運営の素人集団であり、無能であった民主党が政権に在った時であったことが、日本にとって最大の不幸であったとの思いがある。岡田代表の前任者たちによる民主党のでたらめな事故対応で、すべての原子力発電所が停止する羽目になり、莫大な費用を浪費する不必要な除染が今でも続いているという現実を見ると、「日本の経済を壊したのは安倍政権ではなく、岡田氏の前任の民主党幹部の面々ですよ」と言いたくなる。自民党が原子力発電を進めたいと考えても、民主党の時代に刷り込まれた「原子力は危険」、「放射線は少しあってもダメ」、「再生可能エネルギーで日本の電力供給はなんとかなる」という妄想にとらわれている選挙民の反応が怖くて、安倍政権ですら原子力発電所の再稼働、利用推進を言い出せないでいる。このような環境を作ってしまった民主党の成れの果ての民進党代表が「アベノミクス失敗」と言ってのける無責任さ、図々しさにはあきれて物も言えない。
菅直人元首相の置き土産である原子力規制委員会の委員も、大きな問題の原因を作っているといえよう。左翼がかった委員で構成されているため、原子力規制委員会の安全審査は遅々として進んでおらず、サボタージュの様相を呈している。その結果とも言える再稼働の遅れが電気代の高騰に繋がり、日本経済に深刻な影響を与えているのである。
岡田代表の前任者たちによる民主党のでたらめな事故対応で、すべての原子力発電所が停止する羽目になり、莫大な費用を浪費する不必要な除染が今でも続いているという現実を見ると、「日本の経済を壊したのは安倍政権ではなく、岡田さんの前任の民主党幹部の面々ですよ」と言いたくなる。自民党が原子力発電を進めたいと考えても、民主党の時代に刷り込まれた「原子力は危険」、「放射線は少しあってもダメ」、「再生可能エネルギーで日本の電力供給はなんとかなる」という妄想にとらわれている選挙民の反応が怖くて、安倍政権ですら原子力発電所の再稼働、利用推進を言い出せないでいる。このような環境を作ってしまった民主党の成れの果ての民進党代表が「アベノミクス失敗」と言ってのける無責任さ、図々しさにはあきれて物も言えない。
菅直人元首相の置き土産である原子力規制委員会の委員も、大きな問題の原因を作っているといえよう。左翼がかった委員で構成されているため、原子力規制委員会の安全審査は遅々として進んでおらず、サボタージュの様相を呈している。その結果とも言える再稼働の遅れが電気代の高騰に繋がり、日本経済に深刻な影響を与えているのである。
7.優良なマスコミならば経済再生に貢献もできる
一方、マスコミにも景気行き詰まりを解消するのに一肌脱いでもらいたいものである。原子力発電所の運転停止に伴い支出された化石燃料代あるいは再生可能エネルギーの買い取り制度により発生する高い電力購入費について、日本経済新聞ばかりでなく一般紙の経済部の担当者は百も承知しているはずである。これを詳細に調査して景気回復のきっかけを見つけ出そうとすれば、必然的に原子力発電所の再稼働を早めたいとの考えも出てくるはずである。従来からバランスの取れた報道姿勢を示している読売新聞、産経新聞や経済紙を標榜する日経新聞くらいは、産業界の苦悩を斟酌し、原子力発電所の有効利用を提案している我々NPOの意見を紹介するくらいのことをやって貰いたいのである。彼らも自民党同様、民主党政権が作り出した虚像に振り回され、合理的な報道ができなくなっているのではないかと心配になる。
冷静な議論を国民皆が待っている。消費税増税が遅くなって喜んでいるばかりではないことを、為政者たちに十分に認識して貰うためにも、優良新聞が活躍すべき時が来ているのではないか。(伊藤 英二 記)
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